いやー見事っす。素直におもしろく、素直にいい話。まじコレが『蹴りたい田中』と同じ作者かと。
笑福亭松鶴を思わせる理不尽大王な師匠に、ひょんなことで入門しちゃった鶏冠アタマの元ヤンあんちゃんが主人公。上方落語のディープな世界で一歩一歩成長していく彼をとりまく個性的なキャラクターもじつにいい感じ。短編連作でいっこいっこミステリ風味を効かせ、オチをつけつつ、主人公を成長させていく。「人を食ったような」話をさせたらそれこそ天下一品の著者ですが、この作品では日頃の無茶苦茶さがうまーく背景にとけ込んで、ええ噺に仕上がってるっす。この人、こんなのも書けたんだーと、あらためて畏れ入りました。
そしてなにより、著者の上方落語に対するふかーい愛がうかがえるところが、またニクイ。お気軽な1冊ではありますが、落語小説の傑作と言えると思います。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2014年3月30日
- 読了日 : 2005年3月30日
- 本棚登録日 : 2013年5月19日
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