脳の仕組み、記憶の仕組み、ひいては「知能」の仕組みというものを、納得できるモデルとして示した、ひとことでいって「ものすごい本」。知能を担っている大脳新皮質は、たったひとつの役割しか担っていない……それは「記憶をもとに予測すること」だ、というのがまさに論の核心。この驚くべき仮説について、実際の脳の構造から説き起こし、ひとつひとつ「なるほどそう考えると説明がつく」という事例が織り込まれていく。そしてその説明は、「意識」や「創造性」の正体にまで及んでいくのだ。
科学の最先端の分野なのに、平易で読みやすいのも驚き。これは著者が科学者であるとともに「工学的なセンス」の持ち主だからかも。さすがはpalm の生みの親。この仮説にしたがってどのように「本当の人工知能」をつくるか、というところまでたどり着いているところにも夢がある。もしかしたら、「知性を持つコンピューター」が、自分が生きているうちに見られるかも、という希望が湧いてきた。この本を読んでなんらかの具体的メリットが期待できるわけではないが、センス・オブ・ワンダーのあるポピュラーサイエンスの本として今年……いや、近年まれに見る快著だと思う。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
科学
- 感想投稿日 : 2014年3月30日
- 読了日 : 2006年3月30日
- 本棚登録日 : 2013年5月19日
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