戦争映画が好きだった。小学生高学年だった、懐かしの海外テレビドラマ『コンバット』が夕方再放送されるのを、学校から一目散に帰ってきて食い入るように見ていた。友達同士の合言葉「チェックメイトキング2~こちらホワイトロック!」トンプソン短機関銃もM1カービンもそれで覚えた。時を同じくして海外の戦争映画も釣られて見ていた。「トラ・トラ・トラ!」「戦場にかける橋」「史上最大の作戦」「バルジ大作戦」「レマゲン鉄橋」「戦争のはらわた」etc…
そんな中にこの「鷲は舞い降りた」があった。当時としてはナチスドイツ軍が主役である、ということが驚きであり信じがたいことであった、なにぶんその程度の感想しか持ちえず、その後様々な情報を得て不朽の名作であるという事実は知りえていたものの、原作を読むのはこれが初めてであった。
語る言葉はない、というかその言葉を選択するにあたり思いつくものがない。欧米圏では、男子たるもの読むべしなるスタンダードのようである。何もかもが素晴らしい、様々な立ち位置の人々が一つの目的のために結集する。それぞれの胸に去来するものも得るものも違うのだが、それぞれの仕事を立派にやってのける。戦時であり思うようにならない出来事をなんとか形に成し遂げようとしていく。ドイツ軍にかかわる皆が己の仕事に誇りを持って成し遂げる。完璧に思えた作戦が破綻する様、そこに戦争の本質を見る思いがした。敵も味方も同じような父であり息子であり、恋する若者であるのだ。かくて絶望的ラストとなる。
それでも不可能を可能たらしむ為の、それぞれの戦いの緊迫、そしてロマンスまでも詰め込み、その悲劇さえラストを彩る色の一つと化してみせる構成、さらにこれほど多くの名セリフを持つ作品は他にないだろう、総じて「不朽の名作」に嘘偽りはなかった。
- 感想投稿日 : 2013年3月29日
- 本棚登録日 : 2013年2月1日
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