唯一の一次資料「甲陽軍艦」のみに依拠し、一切の虚飾を排した山本勘助の実像を追求した初めての試み。
2006年の刊。ブックオフで購入。標題紙に平山優の署名と蔵書印があるが本物かしら。大河ドラマの便乗本であるが、良書でありオススメです。
以下感想がてらメモとして
p32市川文書発見の逸話について、「この逸話は大変有名で、(中略)諸書に記載されているが、筆者は事実関係を確認していない」と書いてあり、思わずニヤリとしてしまいました。学者らしくて好ましいです。
p23後世の影響とみられる勘助像としてはほかに、「片足だった」、というものがある。(中略)「軍鑑」には、たしかに目は一眼で手足が不自由で、指も満足に揃っていないという記述はあるが、片足であったとはどこにも書かれていない
手持ちの甲陽軍鑑(ちくま学芸文庫)によると、p214「その上一眼、指も叶わず、足はちんばなり。」とあり、p227の訳文では「片眼のうえに、指もそろっておらず、足は片足であった。」とされています。
素人考えだと「ちんば」は、足が不自由という意味に思え「片足」と訳す事には。違和感がありますが、どの様な意味で片足と訳しているのか、気になるところです。(文字通り片足という意味なのか、足が不自由という意味なのか)果たして、後世の脚色なのか、誤訳なのか、誤った解釈なのか。
山本勘助に関する史料が少ないなか、武田家の寄親・寄子制や、他国から来た牢人の登用状況など、著者は工夫して読ませてくれます。巻末の甲陽軍鑑と史実の対照年表が良いです。
残念なのは、参考文献一覧が無い事。文中で文献を明示しているんですが、一覧はやっぱり欲しい気がします。
ネットで検索したところ、2008年の真下家文書の調査に伴い山本菅助関係文書発見されたそうです。新史料により、山本勘助像がどう変わっていくのか、今後さらに注目されるところです。
- 感想投稿日 : 2012年2月2日
- 読了日 : 2012年2月2日
- 本棚登録日 : 2012年1月27日
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