上杉謙信の夢と野望 (歴史新書y)

著者 :
  • 洋泉社 (2011年12月6日発売)
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副題は、幻の「室町幕府再興」計画の全貌。
「軍神神話」の陰に隠された天下平定のシナリオとは?
二度の上洛、関東管領職、川中島合戦、そこには何の意味があったのか。

カバーに書かれた、本書の核心は、父の長尾為景が、朝廷・幕府権力を利用する武略を見て育った謙信は、その政治手法を引き継いだ。信玄、信長も室町幕府再興を目指したが、謙信の死後、形骸化した幕府は、もはや戦国終焉の主役には成りえなかった。謙信の一生は明確な政治目的を持った生涯だったというもの。
本書は、上杉謙信の従来のイメージを見直した内容となっている。

・以下、備忘録として、
長尾為景は越後の守護代であり、政治の実権を握っていたものの、守護である上杉家は存続しており権威を有していた。(ここら辺は、織田氏や朝倉氏と事情が異なる点であろう。)
このため、為景が越後を束ねるためには、朝廷や幕府の権力を利用する必要があったという。謙信は兄晴景から家督を移譲されるが、将来的には、兄の嫡子に、家督を返すつもりであったという見方をしている。守護代という立場を脱しきれないところに、家督の複雑さもあり、謙信は他の戦国大名に比べ、著しく不安定な立場にあった。
こうした事情もあり、武田家、北条家が早くに足場を固めた強者であったのに比べ、長尾家は劣勢からのスタートを強いられた。この劣勢を覆したのが、関東管領への就任であった。謙信が関東管領に就任したことは、武田家や北条家に危機感を募らせた。(信濃守護の武田氏の上位たち、信濃の国人の動向に影響を与え、関東管領を自認する北条氏の権威を否定することとなった)
両雄は並び立たない、謙信は、決戦を求め川中島に出陣し、信玄と雌雄を決するが、決定的な勝利(信玄の死)を得ることが出来なかったことから、次第に守勢に回ることとなる。
・感想
戦国大名とはいえ好き勝手やっていた訳ではなく、幕府や朝廷の権威や権力は無視できなかったというのがわかる。
上杉謙信の基盤の弱さを知ることが出来たのは良かった。
藤木久志氏の「食うための戦争」論に対する反論「ミスリードによるフィクションとは厳しいが」を知ることが出来た。
著者の主張する室町幕府再興論を史料的に証明す

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史(戦国)
感想投稿日 : 2012年5月3日
読了日 : 2012年5月3日
本棚登録日 : 2011年12月18日

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