静かに心に響く作品でした。
二年前に事故で両親を亡くしてから自分の心の部屋の中に閉じこもっていた主人公・青山が、日本を代表する水墨画家・湖山に見出されて水墨と向き合っていくお話。
湖山は青山の画家としての才能を見出したわけではなく、青山の空っぽの心を見抜いて、水墨を通して心を見つめ直し歩き出すことを教えてくれようとしている。
湖山の孫娘や弟子たちとも関わり、水墨の厳しさを通して心を開放していく様子が胸に染みました。
「自分の視野や想像の外側にある場所にたどり着くためには、歩き出して、何度も立ち止まって考えて、進み続けなければならない」
「この世界にある本当にすばらしいものに気づいてくれれば、それだけでいい。」
一般的な師弟の関係ではなく、青山に生きる力、意味を取り戻させようとしている湖山、とても温かい関係だと思いました。
そして自称親友の古前君がとてもいい味を出していて、読者をフフッと笑わせるように青山の気持ちもほっこりさせていて、古前君が登場してくるのが待ち遠しかったりしました。
文章がとても上品で、全体的に美しい作品でした。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年1月22日
- 読了日 : 2021年1月22日
- 本棚登録日 : 2021年1月22日
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