とても引き込まれた一冊でした。
殺人容疑で囚われているカイア。
物語終盤で、これは事故だったのか、殺人だったのか、誰が犯人なのか、真実に近付いてくると、どうかカイアが有罪になりませんように‥‥と祈らずにはいられませんでした。
なのに、真実が明らかになってしまうとこの物語は終わってしまう、本を閉じたくない、と思っている自分もいました。
六歳からたった一人で生き抜いてきたカイア。読む前は、自然の中、例えば無人島のような所でたった一人で生きてきたのかと思っていたのだけれど、そうではなかった。街の近くの湿地で暮らすカイアは食べていくために何とかしてお金を稼がなければならない。それは他人と関わって生きなければならないということ。無人島で一人で生きていくよりも、他人が近くにいて誰とも心を通わせることができないことの方が遥かに孤独を感じると思う。この胸を締め付けられるような孤独の描写が辛くてとても痛かった。
そんなカイアも恋をして、他人と繋がる喜びを知る。しかし、また別れが訪れる。喜びを知った後の孤独。それはどんなに辛いことか‥‥この辺りは随分と昔、若き日に読んだゴールズワージーの『林檎の樹』を思い出しながら読んでいました。
カイアの孤独を救ってくれたのが女友だちだったなら、と何度も思いました。でも、カイア自身が言っているようにカイアが繋がっているのはもっと大きなもの、自然そのものなんですよね。
自然の中で暮らすカイア。
自然界の理、本能。最終的には人間もそこに行き着くと気付くカイア。でもやはり、集団に属したい、愛し愛されたいとも願うカイア。
息苦しい程の美しい大自然の描写、たった一人で生き抜いた女性の力強さ、この物語の世界観にどっぷりと引き込まれました。
- 感想投稿日 : 2021年12月1日
- 読了日 : 2021年12月1日
- 本棚登録日 : 2021年12月1日
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