ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2007年2月8日発売)
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本棚登録 : 675
感想 : 37
4

ファンタジックで心優しいお話を読んだ。お天気がいい休日にふさわしい、現実離れをしたお伽噺ふうの世界が広がっていた。
電撃大賞受賞作、電撃文庫と言うのは、門戸の広い印象を受けた。

人間の世界で奴隷でも最下層の仕事をしていた少女は、手足に鎖をつけたまま森に逃げてくる。そこは魔王が治めていた。彼女は自分をミミズクだと言って、魔王に食べてもらいたいと思っていた。懇願してみても魔王は人間は食べないと言って断る。少女はなぜか魔王が恐ろしくない、できれば食べて欲しいと思いながら、次第に馴染んでいく。

森のある国を収めている王様は魔王を捕まえて、殺してしまいたいと思っていた。聖なる剣士と呪術師たちは森を襲って魔王の住処を焼き払ってしまう。つかまった魔王を助けるために少女は刑場に行く。

ミミズクだというしかない、人間から乖離するほどの悲惨な過去を持っている少女の額に奴隷の番号が付いていた、魔王はそれを記憶を消す印に変える。魔王の過去も、絵を書く趣味も、何か淋しく、少女も過去の記憶は消えたが、何か物足りない。

城には生まれながら手足の不自由な王子もいた、二人は友達になっていく、ここらあたりも、事の成り行きが夢の様でもある。

呪術師が総力を挙げて処女の記憶を回復させようとする、そしてかすかな記憶が甦り、魔王の元に行く。

と言うあらすじだが、騎士や魔法を扱う巫女も登場して、中世ロマンの気配やラブストーリーの側面もあり、王様と王子の親子の情愛も絡む。騎士と巫女と言う子供の持てない夫婦が少女を可愛がり引き取りたいと思ったり、何か善意に溢れた話は、大人が読む童話のようで、たまにはこういう別世界で遊んでみるのも楽しい。  

すぐに忘れてしまうようなものかもしれないが、何か心に残って、いつか読み返したくなるかもしれないと思う。



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読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童書
感想投稿日 : 2020年1月23日
読了日 : 2020年1月23日
本棚登録日 : 2019年12月2日

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