ルドルフとイッパイアッテナ

著者 :
  • 講談社 (1987年5月20日発売)
4.24
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本棚登録 : 3010
感想 : 403
5

この本は猫が書いたらしい。
読んだ娘がそう言っていたのを聞いて、「んなワケないやろ!!」とバッサリ切っていたが、プロローグからやられた。
「ねこに字が書けるわけがないって、そう思ってるんだろう。人間ってやつはいつもそうさ。なにか、めあたらしいことをきくと、すぐにうたがうんだから。むかし、コペルニクスって人が、太陽が地球のまわりをまわっているんじゃなくて、地球が太陽のまわりをまわってるんだっていったとき、やっぱりみんなはすぐに信じなかったそうだし、なかにはそれを聞いて、ゲラゲラわらったり、かんかんにおこったりした人もいたそうだよ。」
そりゃ…そうだ。今までの常識を覆すことをバッサリ切るのは、「コペルニクスの発見」をゲラゲラ笑った民衆と同じ。それを猫に教えられるなんて!
そして、それを人間に教えられる猫はなんて「キョウヨウ」があるのだろう!
この本の主人公で著者の「ルドルフ」は黒猫。子猫の時に魚屋からシシャモを盗んで追いかけられた時にトラックの荷台に隠れ、そのまま一晩乗ってしまい、自分の住んでいた町から遠く離れた東京都江戸川区に来てしまったのだ。
飼い主の町から遠く離れ、途方に暮れていたルドルフを助けてくれたのは、強そうなトラネコ。名前を聞くと「俺のなまえは、いっぱいあってな」と言うので、ルドルフはそのトラネコの名前が「イッパイアッテナ」だと思い、そのまま呼ぶことになった。
イッパイアッテナは今は野良猫で、他の飼い猫たちからは怖がられる存在であったが、同じ立場となってしまったルドルフには優しかった。人間と上手く付き合って餌をもらえる方法など色んなことを教えてくれた。イッパイアッテナには「キョウヨウ」があったから。何故かというとイッパイアッテナが野良猫になる前の飼い主はイッパイアッテナに文字を教えてくれたので、イッパイアッテナは本を読むことが出きたのだ。
そして、イッパイアッテナもルドルフに文字を教えた。小学校の校庭の砂に何度も何度も前足で書いて。ひらがなとカタカナをルドルフが覚えるとイッパイアッテナはルドルフを連れて休みの日の小学校に忍込み、教室の学級文庫の本を取り出して、図鑑などを見せて勉強することを教えた。
夏休みのある日、小学校に休日出勤していた「クマ先生」に小学校の職員室に入れてもらい、そこのテレビに写っていた町の景色がルドルフの故郷であったので、ルドルフは岐阜から来たことが分かった。そしてある日、商店街の岐阜へのバス旅行のポスターを見て(字が読めたから)、そのバスに忍込めば、ルドルフが帰れること、そして、やっと飼い主のりえちゃんに会えるという目処がついた。
そしていよいよバス旅行の前日、明日はイッパイアッテナとお別れしてルドルフは岐阜に帰るという日、イッパイアッテナはルドルフへの餞別に喜ばせてあげたくて、ある計画を立てたのだが……。
動物たちの友情と飼い主との再会のための冒険。昔観ていた英会話教材の「リトル・チャロ」を思い出す。
この童話、思っていたよりも古く、1987年に第一版だった。イッパイアッテナはルドルフに「どの家にもある」漢和辞典や百科事典の使い方を教え、ルドルフが岐阜に帰ってからも勉強を続けられるように励ましていたが、今は漢和辞典はどの家にもある本ではないだろうな。今なら彼らはどんな生き方をするだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年1月2日
読了日 : 2024年1月1日
本棚登録日 : 2024年1月1日

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コメント 10件

workmaさんのコメント
2024/01/02

macomi55さん

子どものころ好きだった本!また、読みたくなりました(・∀・)。なつかしい気持ちになりうれしくなりました(*^^*)

白いヤギと黒いヤギさんのコメント
2024/01/02

たしか、1988年に『小学校中学年向け課題図書』に選定されていました。夏休み中に、読書感想文コンクール出品作を選ぶ予習として読んだ記憶があります(笑)
毎年、数多くの課題図書が示される中で、現在でも支持されているという事は、やはり名作の一つと言って良いのだと思います。

Macomi55さんのコメント
2024/01/02

workmaさん
コメントありがとうございます。
小さい頃に読まれていたのですね。
この本が初めて出版された当時、私はもう子供ではなかったので、知らなかったのですが、数年前の映画に合わせて?書店に並んだときだったか?子供のために買って、私は読まないまま置いていました。
なんとなく読んでみる気になってページを開けてみると、物語も杉浦範茂さんの絵も味わい深く、猫をめぐる人の優しさも感じられ、いいお話だと思いました。

workmaさんのコメント
2024/01/02

Macomi55さん
小学生高学年だったころ、学校か図書館で借りて読んだとおもいますが、それ以来読んでないので、これを機会に再読しようとおもいます。表紙を見ただけで『なつかし〜すきだったなぁ…』と思いながら通り過ぎてました(;^ω^)

 当時も今も、杉浦範茂さんの絵が、すごく好きで…。
 繁茂さんの絵って、線がすごく特徴的だからすぐ分って、当時、絵を見つけると読み漁っておりました…(・∀・)

 杉浦範茂さん絵の、『キャプテンはつらいよ』青い鳥文庫(だったかな?)シリーズも好きで、小遣いで買いましたね。
 思い出にふけってしまいました。コメントのおかげです。
ありがとうございました(*^^*)

Macomi55さんのコメント
2024/01/02

白いヤギと黒いヤギさん
コメントありがとうございます。
「課題図書」懐かしい響きです。子供の頃は夏休みの読書感想文の宿題が大嫌いでした。
今、自分の子供はあまり作文の宿題を出されることはなく、読書感想文の宿題でも特に「課題図書」に力を入れられるということはなく、好きな本を読んで、原稿用紙3枚くらい(小学生)で良かったと思います。調べものも殆どインターネットで済ませていて、上の子の時には私は“紙の辞書“を使わせることにこだわっていたのですが、私自身もネットで何でも調べるようになってしまったので、子供にも手段を選ばすとにかく「何でも聞かずに調べなさい」というだけになりました。時代は変わりましたね。ネットの情報ばかりに頼らず、自分で知識を構築出来る子になって欲しいと思いますが。私の親は「漫画なんて!」という古いタイプの親でしたが、私は自分の子供がたとえ漫画でも紙の本を「読書」しているだけで褒めてあげたくなります。

Macomi55さんのコメント
2024/01/02

workmaさん
杉浦範茂さんの絵は、表情な尖っているのになぜかとても温かくて可愛らしいですよね。
私は与田準一作、杉浦範茂 絵の「おばあさんとこぶたのぶうぶう」という絵本を読み聞かせており、次女がめちゃくちゃ気に入ってくれてました。おばあさんがタンスの陰から出てきたお金でこぶたを買うのですが、ちっとも檻の中に入ってくれないので木のポカンポカンに「こぶたを叩いておくれ」と頼むのですが、ポカンポカンが言うことを聞かないので火にポカンポカンを追いかけさせ、火が言うことを聞かないので水に火を追いかけさせ、、、、と順々に頼み、最後のページまで行くと今度は本の上下をひっくり返して、元に戻っていく本でした。その本はバザーで手に入れた本で、当時から絶版だったと思うので、ブクログで登録出来ず、残念です。

workmaさんのコメント
2024/01/03

macomi55さん
「おばあさんとこぶたのぶうぶう」という絵本、知りませんでした!ヮ(゚д゚)ォ!

与田準一さんと杉浦範茂さんならまちがいないし、あらすじだけで、おもしろそう〜(*´ω`*)
絶版ということなので、図書館で探してみますヽ(=´▽`=)ノ

workmaさんのコメント
2024/01/03

白いヤギさんと黒いヤギさんへ

課題図書選定の年まで書けるということが、すごいとおもいます!(^o^)!。(日ごろ、あれ〜?いつだったっけ?と、テキトーにあいまいに暮らしているので)

 読書感想文、「課題図書」はありつつも、自分の好きな本の感想でよかったことと、読むこと書くこと自体が好きだからそんなに苦にならなかった…

ですが、読書感想文苦手とする子ども多いみたいなので、強制されちゃうとちょっと、気の毒。宿題も、例えば…ポスターか感想文か、で選択出来るといいですね。
高校だと美術・書道・音楽と、選択できたので。
まとまりませんが…(~_~;)

白いヤギと黒いヤギさんのコメント
2024/01/03

workmaさん、Marconi55さん、返信ありがとうございます。

全国の小中学校には毎夏、膨大な作品展の案内が来ます。その中に必ずあるのが『読書感想文コンクール』です。夏休みの宿題を廃止する向きもありますが、「夏休みには宿題を出して欲しい」という保護者は必ずいます。ですので(私の住む地域では)案内が来た作品募集を一覧表にして夏休み前に児童に示しています。すると、(強制でなくても)読書感想文を書いてくる子は必ずいます。教員は子どもたちが書いた作品を可能な限り無駄にしません。誤字脱字をチェックし、文意が伝わるよう校正し清書させて、(出来れば)コンクールで入賞するように支援してから出品します。子どもや保護者が喜んでくれると嬉しいので。

と、言うわけであくまでも私の場合、『課題図書だけでも夏休み中に読んでおけば校正等の作業がしやすい』ので読んでいた、そのせいで課題図書の指定年次まで覚えてた、という次第です。
…あ、単に"読書好き"だからか?(笑)長々とすみません。

Macomi55さんのコメント
2024/01/03

workmaさん
「おばあさんとこぶたのぶうぶう」図書館で見つかるといいですね。「おはなしチャイルドリクエストシリーズ」の34巻目で、薄い本です。

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