鈴木牧之 (1770-1842) の『北越雪譜』は、雪国の様々な自然、風俗、奇譚、逸話を絵入りの読み物として記しており、非常に興味深い。
次の話は、自然発火現象の記録である。原因は不明だが、発光生物、或いは地表に染み出た原油の発火によるもの等であろう。
「筑紫のしらぬ火といふは古哥にもあまたよみて、むかしよりその名たかくあまねく人のしる所なり。その然(もゆ)るさまは春暉(しゅんき)が西遊記にしらぬ火を視(み)たりとて、詳(つまびらか)にしるせり。其しらぬ火といふも世にいふ竜燈(りうとう)のたぐひなるべし。我国蒲原郡(かんはらこほり)に鎧潟(よろひかた)とて東西一里半、南北へ一里の湖水あり、毎年二月の中の午(うま)の日の夜、酉(とり)の下刻より丑(うし)の刻頃まで水上に火然(もゆ)るを、里人は鎧潟(よろひがた)の万燈とて群(あつま)り観る人多し。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2021年5月19日
- 読了日 : 2021年5月19日
- 本棚登録日 : 2021年5月19日
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