ファウストvol4 (講談社 Mook)

  • 講談社 (2004年12月24日発売)
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本棚登録 : 297
感想 : 17
5

文 芸 合 宿

この企画、すげーーええ!面白いッ!

◆競作◆

『子供は遠くへ行った』乙一
今いち。展開が読める。初めから妊娠がまるわかり。
なんだろう・・・あんまり面白くなかったけれど、最後思い返すと
たしかに良作なんだろうな、と云う気がしてくる。つまらない秀作。
あと、つっこみ所が満載すぎる。先輩よ、お前ダメでしょ。

『こころの最後の距離』北山猛邦
これは・・・・これは・・・・あたしにはさっぱり判らない。
形式的すぎて、その楽しみ方が皆無の私にとっては物語を追うしかないのに、
その物語ではあまりに薄っぺらいというか、響いてこない。
会話、動作、死に方、全てまったく魅力を感じず・・・(==;)

『地獄の島の女王』佐藤友哉
ユヤーーっ!!なんか胸がささくれ立つね。ちくちくするね。
読みすすむ楽しさ、文章、展開の楽しさ。それは大いに満載。
が、しかし。読み終わった後の感想・・・となるとなぁ。
だって・・・これテーマ上京とかマジ苦しいでしょ。

『新世紀レッド手ぬぐいマフラー』滝本竜彦
痛々しかったよ。
描かれていること、自分を演出、振舞うことでしか自我を見出せない。
保てない。「自分」とは一体なんなのか。見失っている。
そんなテーマが痛く伝わる。がしかし、上京ではないだろうッ!!!
ラストがなんかふんありしてて、いいんだけど・・・ちょと、期待はずれ。

『携帯リスナー』西尾維新
あたしの中の競作としては一番かな。
短編としてとてもくっきりしている。私としては上京というテーマにもしっくりくる。
上京=孤独 自分ひとりの時間。云々はとても共感するところだから、そんな一人の時間に
スポットを当てているからとても好感を持てる。
孤独な時間という切なさも、この軽快な語り口でだいぶさっぱり読める。
ラジオの中の投稿記事やネタ、そういう小ネタも凝っていて、すごいなぁと思う。
ラスト平和やなぁ。やっぱこれもちょと期待はずれなラストではあるかも。

◆リレー小説◆

この企画また、おもしろいなぁ!!
こんなん読んでみたいって思うけど本当に雑誌で企画してくれるのかぁ、て感じ。
さすがです!!!(@ω@)太田氏。

『誰にも続かない』
そして奇跡が起こった・・・・
面白い・・・すんごーーーぉい面白い!!!
この登場人物たちは幸せだね!五人もの作家によって自分を描いてもらえて!
だって、妹とか、その様々な変貌ぶり、マジ格好よすぎますよ!(笑)
乙一が上手く一番手っていうのが本当にバランスが良い。
このふんありした霞むような語り口から始まり、北山氏パートでのぞくぞくするような
ミステリ展開。ここで、ユキコがなんか一気に主人公から切り離された感じが、面白かった。
乙一が内包していた恋心が絶たれた(笑)
そしてユヤタン。ユヤ・ターン。さすがです。事件解決してしまいました。
しかも。ユキコが恋愛→女生徒→悪と、また変貌しました!!
そこへ妹、復刻。やはり拾いました。乙一の「色気づきやがって」
いや、これはたぶんユヤタンに対するフリだと思う。妹出てきたのもそもそも。
でも、なんか乙一がゆったからといって妹が兄を「兄さん」と呼ぶ呼び方。
ユヤや西尾維新がやるとまた面白い。「兄さん」とか無いわぁーww
そしてユヤで強くなりほぼ、キーとなった妹。そしてユキコの滅亡ww
滝本氏へのつなぎ方もなんとも云えずリレーぽくて可笑しい。
そして滝本氏、その台詞を思い切り一撃!!いきなりっす!笑
「なにが「手篭めにしますか?」だ。―こんな挑発に誰がのってやるものか。」
ウケルーーーwww!!!
そしてここでユキコ、恋愛を少し取り戻す。良かったっすね。
事件は解決されたので、個々の問題へと踏み込む(これぞ奇跡の瞬間)
小説を書く、とは何か、という当初のテーマへと立ち返る。
西尾氏。妹全面押し出し。これにはびっくり。
しかも、いままでの西尾作品のキャラからはちょっとあたし的に想像できないほど、
妹の黒さが、ツボ。黒いっす!!西尾キャラでこんなに黒い子初めてみたよ!!いいよ!!とってもいいよ!!
妹が自体を収束してくれ、主人公は結局残念な終わり方をしました。
ユキコさんはラスト、ターンを持って行きました。
ユキコ、カオスなキャラとして最後までいきましたな。

全員が全員、どこか「小説を書くとはなにか?」という問題に、それぞれ自分なりの
視点で、手を入れているのが興味深い。
そこが読んでいてとても良い収穫になるし、ドタバタストーリーをそれだけでない何か深いものにした。
それにしても、面白かった(^ω^)またやってくれないか。




読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学
感想投稿日 : 2009年4月5日
読了日 : 2009年4月5日
本棚登録日 : 2009年4月5日

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