フランシス・ハーディングの邦訳4冊目にあたる小説。といっても、先の3冊よりは前に書かれたものらしい。舞台は架空の地下都市「カヴェルナ」。カヴェルナで暮らす人々と違い、面(おも)を持たない少女ネヴァフェルが自分のルーツと、カヴェルナの真相を解き明かしていく物語。冒頭からチーズづくりの描写や、虫くいランタン、記憶を消すワインなど、設定が摩訶不思議で、前回の小説の感想にも書いたが、良くこんな事思いつくなあと感嘆する。カヴェルナの人々は表情を持たず、面と言われる技術(その場面にふさわしい表情)を習得するのだが、ネヴァフェルは面を持たず、普段は仮面を着けて暮らしている。
ネヴァフェルが無自覚に行動していくたびに、最低必要限の面しか持たない貧困層と、いくつもの面を習得できる裕福層に分かれ、格差社会の構造が浮き彫りになっていく。最初はなんかパッとしないネヴァフェルが、仮面を外したあと覚醒したかのように成長していく様子と、社会の大きな歪みが元となり崩壊していくカヴェルナが物語のクライマックスである。最後に夢にまで見ていた、美しい地上に降り立つネヴァフェルたちのラストシーンは印象的だった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ファンタジー小説、児童文学
- 感想投稿日 : 2023年9月1日
- 読了日 : 2023年9月1日
- 本棚登録日 : 2023年9月1日
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