炎の色 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫 ル 5-4)

  • 早川書房 (2018年11月20日発売)
3.59
  • (8)
  • (29)
  • (21)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 234
感想 : 24
4

さすがルメトール、ストーリーテリングは秀逸。ヒトラーが台頭する混乱のフランスを舞台にした没落貴族女性の復讐劇。ルメトールは、前半はこれでもかこれでもかという悲劇(わが子が車椅子になってしまったり、周囲に騙され資産を失ったり)を描き、後半はこれら騙された相手を秀逸に復讐する物語を描く。これだけの登場人物を魅了あるキャラクターに仕立て上げ、それぞれを絡ませながら、なおかつ面白く描くルメトールに脱帽の一冊。

ただ今までの作品に比べて鈍った印象。登場人物たちが多くてそれぞれの人物の描きわけが短かったり、はじめから全て関係した一つのストーリーだったからだと思う。今までの作品は、章によって登場人物が書き分けられ、まったく関係のない話が進行していく。読者はその二つのストーリーを楽しみつつ、どう絡み合っていくのかと期待する。今作はそのような点があまり見受けられなかったのでそのように感じた。決してつまらなくはなく、新規性に欠いた故の星一つマイナス。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年8月9日
読了日 : 2019年8月9日
本棚登録日 : 2019年8月9日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする