さすがルメトール、ストーリーテリングは秀逸。ヒトラーが台頭する混乱のフランスを舞台にした没落貴族女性の復讐劇。ルメトールは、前半はこれでもかこれでもかという悲劇(わが子が車椅子になってしまったり、周囲に騙され資産を失ったり)を描き、後半はこれら騙された相手を秀逸に復讐する物語を描く。これだけの登場人物を魅了あるキャラクターに仕立て上げ、それぞれを絡ませながら、なおかつ面白く描くルメトールに脱帽の一冊。
ただ今までの作品に比べて鈍った印象。登場人物たちが多くてそれぞれの人物の描きわけが短かったり、はじめから全て関係した一つのストーリーだったからだと思う。今までの作品は、章によって登場人物が書き分けられ、まったく関係のない話が進行していく。読者はその二つのストーリーを楽しみつつ、どう絡み合っていくのかと期待する。今作はそのような点があまり見受けられなかったのでそのように感じた。決してつまらなくはなく、新規性に欠いた故の星一つマイナス。
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- 感想投稿日 : 2019年8月9日
- 読了日 : 2019年8月9日
- 本棚登録日 : 2019年8月9日
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