ツチヤの口車 (文春文庫 つ 11-10)

著者 :
  • 文藝春秋 (2008年2月8日発売)
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本棚登録 : 326
感想 : 20
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「まえがき」から面白おかしく読み始められた。日常の些細な事が面白い話に作り上げられていて、綾小路きみまろの話に知性を加えた表現といえる。面白いので電車では読んではいけない分類に入る。屁理屈を磨きたい思春期の学生にはとくに読ませてはいけない。
こんな文章を書いてみたいと思わせる一冊だった。短いエッセイで何度も笑わせるのは高度な技術だが、笑いを生み出す「型」を作れているからそれが出来ている。内容は「面白い・笑える」といった軽いものであっても。構成・表現においては何度も読み返して検証して、その「型」を身に付けたいと思った。

抜粋させて頂くのは「打つ手はありません」の中の一つ。この質問に対する回答はとくに高度な構成力と感じた。
【問】好きな人がいるのですが打ち明けられません。どうしたらいいでしょうか。
【答】打ち明けてもどうにもなりません。あなたから見て魅力的な相手です。あなたを好きになるという可能性は無人島に二人きりで無い限り殆どありません。たとえ好きになってくれたとしても付き合えばいつか幻滅します。たとえあなたが幻滅しなくても相手が幻滅します。この流れを止めようとしても打つ手がありません。後悔するくらいなら最初から諦めた方が賢明です。このように打ち明けてもロクな結果にならないと思えば気軽に打ち明けられる筈です。

これを読んでこの人とお知り合いになりたいと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本,小説,エッセイ
感想投稿日 : 2013年3月28日
読了日 : -
本棚登録日 : 2013年3月28日

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