女から男になったワタシ

著者 :
  • 青弓社 (1996年3月1日発売)
3.43
  • (0)
  • (3)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 26
感想 : 4

(7月 ライフストーリーより 遅くなってすみません)
この本では、筆者、虎井さんが男性の体になった理由、サンフランシスコでの手術内容とその後について、当時のアメリカの性転換の為に必要な治療について、筆者が出会ったMTF(男体だが女体になりたい人)、美加さんの手術を看病する様子について、最後に日本でのTS(トランスセクシャル)のための「FTM(女体から男体)日本」という雑誌の創刊から、日本の当時の課題や世界の状況について書かれている。

女性から男性になる気持ちについて知りたくてこの本に決めた。読んでよかったのは、男女について、全く知らない視点を知れたことである。筆者は女体で生まれてきた男性である。最近LGBTなど話題になっているが、この本は私が生まれた頃に出版されている。今よりTSに対しての理解が無かった頃、男と女の境目がはっきりしていた頃だと思う。
その時代に両性を経験した筆者が、どちらが得とか損とかではなく、「プラスマイナス0」と言っている。これにはすごくわくわくした。女性が輝く社会、とか、今の社会の女性への注目に、私は少し戸惑いがあるからだ。虎井氏は、女性であるが故に生理や社会での地位の低さなど辛さがあるが、男性は女性と同じ給料でも重労働に選抜されたり、女性料金など女性への優遇'のために損をする場面があると言っている。実際に社会に出ないとわからないが、今思うのは、女性への支援とは何のためだ?労働力、少子高齢化の改善だけなら、違う、男女の平等のためじゃないならきっと今まで女性が抱えてきた悩みは根本的には消えないのだ。
また、少しぎょっとしてしまったのは、手術後の陰部の写真や胸をなくす手術のイラストなどが載っていること。本当にTSしたい人も学べる内容になっているんだろうが、やはり性や体の見方が違う。FTM(女体から男体)の筆者がMTF(男体から女体)の手術をしている美加さんを看病する日記では、美加さんが持つ手術した後の陰部の形についての不満や、便の調子を記録していた。ほんとに生物学的な記録で、全くいやらしくない。でもこれは私たちでは中々無いやり取りだと思う。2人とも男になりたい、女になりたいと強い気持ちがある人で、ゲイやレズとは違う存在。けれど、この場面を見ると、やはり男でも女でも無いような気がしてしまう。これは侮辱になってしまうかもしれない。だが、やはり性は二択ではなく、どこに点が置かれるかという範囲なのかもしれない。いや、やはりこれを言うと彼らが手術を受けるほど違う!と思う性への感覚が理解できなかったことになるか…。
子供の頃、男の子扱いされて嬉しかったという経験は私にもあった。だが、小学校の性教育で自分が社会的には女であるとわかった時の絶望するというのは全く分からない。
なにより「生理の日には、頭を壁に打ちつけて涙を流してきた。」という一文は、頭ではなく感覚に訴えるものだった。もし男の自分が女の体と戸籍を勝手に与えられて、ある時生理になったら。ぞわぞわっと、そういう本当の気持ち悪さが感じられて、それを避けられず毎月我慢するのを思うと、自分には想像できない戦いを生きてきた人だと思った。
また、筆者は、あまり深く書かれていなかったが、そんな時両親からも自分が男だと認めてもらえなかったようだった。親の力がなくてもこんなに立派に大人になる力がある人もいるんだと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2016年7月19日
読了日 : 2016年7月19日
本棚登録日 : 2016年7月4日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする