レトリック認識 (講談社学術文庫)

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  • 講談社 (1992年9月4日発売)
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【目次】
目次 [003-006]

はじめに 認識のかたちとしてのレトリックの《あや》 009

第1章 黙説あるいは中断 021
  口をつむぐこと
  ‎沈黙の表現
  ‎黙説または中断
  ‎理解のための参加
  ‎《未決》とサスペンス

第2章 ためらい 051
  ことばづかいの戸惑い
  ‎《ためらい》の定義
  ‎表現の相対化
  ‎《訂正》の言語作用

第3章 転喩あるいは側写 088
  推移する情景
  ‎《転喩》の定義
  ‎転喩表現の相対性
  ‎転喩のさまざまな可能性
  ‎転喩あるいは側写
  ‎相を転じて見る、視点の切りかえ

第4章 対比 121
  意味の対称的な造形
  ‎語り手の関心と《対比》
  ‎《対比》を設定する文脈
  ‎新しい対比の発見
  ‎対比的な感じかた
  ‎《平行》表現と《対句》

第5章 対義結合と逆説 157
  反対のことばの結合
  ‎《対義結合》と矛盾
  ‎対義結合と動く視点
  ‎肯定と否定の連立
  ‎《逆説》と通念
  ‎逆説と対義結合

第6章 諷喩195
  隠喩と諷喩
  ‎諷喩の定義
  ‎平行する構造としての諷喩
  ‎認識としての諷喩
  ‎楽しみとしての諷喩

第7章 反語 219
  真意の反対
  ‎反語の生いたち
  ‎反語、それから話題は脱線して……
  ‎伝統的レトリックにおける反語
  ‎反語信号
  ‎反語と想像力

第8章 暗示引用 254
  暗黙の参照
  ‎暗示引用の定義
  ‎模擬または模索
  ‎暗示引用と「引喩」
  ‎暗示引用と選別作用

おもなレトリック用語――日本語・ヨーロッパ語 対照表 [285-287]
おもな引用文献 [288-290]
あとがき(昭和五十六年十月 佐藤信夫) [291-292]
解説(池上嘉彦) [293-301]



【抜き書き】
□187-188頁
 《逆説》とは世間の通念に真向から反する意見である、という、わかったようで(じっさいには)雲をつかむような広い意味の定義も、具体的な例に即して観察すれば、それが現象としては、じつは意味接続の暗黙の規則への反逆だということがわかる。


□194頁
 《逆説》、パラドクスということばがレトリックの専用語でないことは、言うまでもない。
 ‎たとえば論理的《逆説》とは、あるひとつの命題から必然的に、ふたつ以上のたがいに矛盾し合う帰結が導き出されてしまう、厄介な事情をさすだろう。〔……〕
 ‎ただし、言語表現の《逆説》は、矛盾し合う対義的事項を積極的に連立させることによって、認識をかろうじて造形しようとするこころみであるが、それに対して論理の《逆説》においては、困ったことに対義的事項が連立してしまう……のである。どうやら向きがちがうようだ。

読書状況:積読 公開設定:公開
カテゴリ: 8XX.言語総合
感想投稿日 : 2018年3月18日
本棚登録日 : 2013年8月23日

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