【目次】
目次 [003-006]
はじめに 認識のかたちとしてのレトリックの《あや》 009
第1章 黙説あるいは中断 021
口をつむぐこと
沈黙の表現
黙説または中断
理解のための参加
《未決》とサスペンス
第2章 ためらい 051
ことばづかいの戸惑い
《ためらい》の定義
表現の相対化
《訂正》の言語作用
第3章 転喩あるいは側写 088
推移する情景
《転喩》の定義
転喩表現の相対性
転喩のさまざまな可能性
転喩あるいは側写
相を転じて見る、視点の切りかえ
第4章 対比 121
意味の対称的な造形
語り手の関心と《対比》
《対比》を設定する文脈
新しい対比の発見
対比的な感じかた
《平行》表現と《対句》
第5章 対義結合と逆説 157
反対のことばの結合
《対義結合》と矛盾
対義結合と動く視点
肯定と否定の連立
《逆説》と通念
逆説と対義結合
第6章 諷喩195
隠喩と諷喩
諷喩の定義
平行する構造としての諷喩
認識としての諷喩
楽しみとしての諷喩
第7章 反語 219
真意の反対
反語の生いたち
反語、それから話題は脱線して……
伝統的レトリックにおける反語
反語信号
反語と想像力
第8章 暗示引用 254
暗黙の参照
暗示引用の定義
模擬または模索
暗示引用と「引喩」
暗示引用と選別作用
おもなレトリック用語――日本語・ヨーロッパ語 対照表 [285-287]
おもな引用文献 [288-290]
あとがき(昭和五十六年十月 佐藤信夫) [291-292]
解説(池上嘉彦) [293-301]
【抜き書き】
□187-188頁
《逆説》とは世間の通念に真向から反する意見である、という、わかったようで(じっさいには)雲をつかむような広い意味の定義も、具体的な例に即して観察すれば、それが現象としては、じつは意味接続の暗黙の規則への反逆だということがわかる。
□194頁
《逆説》、パラドクスということばがレトリックの専用語でないことは、言うまでもない。
たとえば論理的《逆説》とは、あるひとつの命題から必然的に、ふたつ以上のたがいに矛盾し合う帰結が導き出されてしまう、厄介な事情をさすだろう。〔……〕
ただし、言語表現の《逆説》は、矛盾し合う対義的事項を積極的に連立させることによって、認識をかろうじて造形しようとするこころみであるが、それに対して論理の《逆説》においては、困ったことに対義的事項が連立してしまう……のである。どうやら向きがちがうようだ。
- 感想投稿日 : 2018年3月18日
- 本棚登録日 : 2013年8月23日
みんなの感想をみる