げんきな日本論 (講談社現代新書)

  • 講談社 (2016年10月19日発売)
3.63
  • (13)
  • (44)
  • (34)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 406
感想 : 31
2

 日本史の基礎事項と著者の持論・偏見を混ぜまぜしたもの。私はタイトル通り、平成の日本人論のひとつとして読もうとしました。が、比較文化チックな要素はそれほどありません。
 全体的に、ライトな保守派を読者層として意識した書き方に思えます。
 お二人が「すごーい」「とくしゅー」と連呼するのを見て、私たちが咽び泣くための本とも言えます。


【版元の内容紹介】
 皆さん、お待たせしました! 30万部超『ふしぎなキリスト教』でおなじみ、ふたりの社会学者が、痛快無比に語り尽くした「新・日本史」の登場です。
 土器、古墳、ひらがな、源氏物語、日本刀、安土城、国学……なぜ日本人は、かくもユニークな文化を生み出せたのでしょうか?
 日本史にまつわるそもそもの疑問18個を真剣に議論することで、日本そのものの特異さやおもしろさ、現代に生きる日本人の「由来」が、どんどんわかってきます。
 そしてそれによって、自己を見失っていると感じる人でも、自信を取り戻して元気になれるのです!
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062883917

【目次】
まえがき(橋爪大三郎) [003-005]
はじめに [006-011] 
  連立方程式としてみる/ストーリーをみつける/全体の流れ
目次 [012-014]

第一部 はじまりの日本 015
01 なぜ日本の土器は、世界で一番古いのか 016
  日本の自然/日本は行き止まり/自然についての知識/移動か定住か/縄文土器はなぜ古いか/定住と交易/死者のための場所/ネイティブアメリカンとの違い/土器の編年/柳田國男と網野善彦/アンビリニアル/縄文と弥生/どうやって中国文化が伝わったか/イギリスとの違い
02 なぜ日本には、青銅器時代がないのか 036
  青銅器とは/青銅器は、貴族制をうむ/鉄器の登場/車輪と戦車/クニとクニ/都市国家は戦争マシン/日本の戦争は、ゆるい
03 なぜ日本では、大きな古墳が造られたのか 046
  敵との線引き/平和のため?/古墳時代の軍事力/王の権力/青銅器の役割/天皇制なのか/なぜ王制に?/倭とは?/他称と自称
04 なぜ日本には、天皇がいるのか 062
  王朝の交代?/ウジとカバネ/血縁集団と名前/漢字を当てる/王と、大王/カミを祀る/神と天/日本に天がない理由/征服によって認めさせる/詫び状を入れさせる/カエサルの逆説
05 なぜ日本人は、仏教を受け入れたのか 079
  中心と周縁/仏教を取り入れた背景/仏教は、普遍思想/仏教のもたらす矛盾/それでも字が読めた/拒絶しつつ受容する/精神世界の二重化/漢字は意味をもちこむ
06 なぜ日本は、律令制を受け入れたのか 096
  朝鮮半島の地政学/中国軍は強い/天の観念を輸入できるか/カミと天/果たして律令制か/律令制の不思議/血統証明が不要

第二部 なかほどの日本 107
07 なぜ日本には、貴族なるものが存在するのか 108
  貴族とはどういうものか/中央政府のポスト/ヨーロッパの貴族/律令制と貴族/貴族はなぜ武士でないか/家産官僚でもない/土地を支配するということ/所領に住むか住まないか/荘園はネコババか/荘園の利害打算/農民のメリット/国家財政の窮乏/協会領と封建領主/協会は死なない/寺社領の不思議/寺社領か公家領か/中央政府の空洞化/クーデターが起きない理由/天皇の統治権/「空気」の支配/『古事記』『日本書紀』の戦略/贈与と税
08 なぜ日本には、源氏物語が存在するのか 142
  漢字と仮名/万葉仮名/表音と表意/仮名の登場/漢字の重み/三つの仮名/片仮名の特性/カタカナ先習/なぜ、両方あるのか/平仮名と音の体系/漢字は外のしるし/音読み、訓読み/古典の成立/ラカンの仮説/女性と宮廷文学/カウンター世界
09 なぜ日本では、院政なるものが生まれるのか 174
  摂関政治の不思議/妻の父の権力/通い婚の戦略/摂関政治の論理/田中派の論理/院政という可能性/院政の秘密/律令制の影/武家政治と院政/貴族の没落
10 なぜ日本には、武士なるものが存在するのか 191
  武士とはなにか/馬に乗る武者/最初は馬を飼う人びと?/押領使の任命/貴族は武装した/馬はなぜ大切か/軍のリストラ/武士はビジネス/運輸を制する/騎兵なのか/武士のルール/武士は実利的/武士はイエか/封建契約/契約から運命へ/税金逃れ
11 なぜ日本には、幕府なるものが存在するのか 219
  ふしぎな幕府/右近衛大将の意味/公家と武士/名目と実質/承久の乱/農民から見ると/頼朝の作戦/王朝交代ではない/南北朝の争乱/武士は脆弱/朝廷との距離/後醍醐天皇はどこが変?
12 なぜ日本人は、一揆なるものを結ぶのか 243
  農民の自立性/惣村の成立/都市と農村/平等で自由/惣村は社会を変えうるか/農民と領主/国人一揆/一向一揆の論理/一揆の限界/農民と武士の機能分化

第三部 たけなわの日本 259
13 なぜ信長は、安土城を造ったのか 260
  斜陽の室町幕府/誰が戦国大名になるのか/正統性の創出/戦国大名・信長/信長の安土城と天皇/天皇をしのぐ権力/天守閣とはなにか/空中の信長/もし信長が生きていたら/信長が殺される理由/直属軍がいるか/武力を超えた権威/信長とキリスト教/後醍醐と信長/武士という矛盾
14 なぜ秀吉は、朝鮮に攻め込んだのか 290
  後継者・秀吉/後継者を意識した/秀吉の手法/明を征服すれば……/朝鮮出兵の焦り/戦争マシン/消極的な気分/領地が報酬/統治のルールが違う
15 なぜ鉄砲は、市民社会をうみ出さなかったか 304
  鉄砲開発の目的/鉄砲は社会を変える/テクノロジーと戦争/鉄砲と集団戦/武士が鉄砲を支配する/兵農分離/鉄砲は、反武士的/鉄砲とパイク兵/オスマン帝国の軍隊/鉄砲と刀/鉄砲に対する軽蔑/鉄砲を統制する
16 なぜ江戸時代の人びとは、儒学と国学と蘭学を学んだのか 324
  江戸時代とは何か/絶対王政ではない/徳川の平和/空気を読む大名たち/正統性が弱い/武士が行政をやる矛盾/なぜ儒学か/武士の悩み/イエ制度の実際/イエの定義/意識されたイエ/イエは幕藩制の効果/イエ制度のなかの自由/江戸時代の社会/武士と行政文書/鎌倉仏教と江戸儒学/町人の儒学/日常と儒学/主君のため、イエのため/朱子学と幕藩制/テキスト原理主義/古代にさかのぼる/儒学と国学/中国ローカルなコンテキスト/宣長と源氏物語/古事記研究/儒学と宣長/道論争/実証とフィクション/蘭学というメソッド/デリダ的補助線
17 なぜ武士たちは、尊皇思想にとりこまれていくのか 376
  尊皇思想の原点/新井白石と山崎闇斎/朱子学と尊皇論/天皇と教皇/無条件の服従義務/忠誠の宛て先/尊皇運動の根源/幕府はなぜ財政難なのか
18 なぜ攘夷のはずが、開国になるのか 393
  幕府内部の論争/独立を全うできるか/和親条約の効果/親米感情/戊辰戦争の背景/刀か鉄砲か/幕藩制と同胞意識/大勢に従う/四民平等/流動性が高かった

あとがき(大澤真幸) [413]

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  210.日本史
感想投稿日 : 2016年10月25日
読了日 : 2016年10月28日
本棚登録日 : 2016年10月25日

みんなの感想をみる

ツイートする