我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社 (2017年12月14日発売)
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本棚登録 : 574
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 アジア地域での人類進化の研究報告。さすが、ライター筆だと文章もストーリーも分かりやすい。
 布教のために、中学の教室後方の本棚(とか)に紛れ込ませたい。


【書誌情報など】
著者――川端裕人 
監修――海部陽介 
カバー装幀――芦澤泰偉・児崎雅淑
カバー写真――フローレス原人の復元模型(提供/国立科学博物館)
本文デザイン――齋藤ひさの(STUDIO BEAT)
本文図版――海部陽介、さくら工芸社

発売日 2017年12月14日
価格 定価 : 本体1,000円(税別)
ISBN 978-4-06-502037-1
通巻番号 2037
判型 新書
ページ数 288ページ
シリーズ ブルーバックス 

 我々ホモ・サピエンスが出現する前、地球には実に多様な「人類」がいた。教科書に載っているジャワ原人や北京原人、ネアンデルタール人だけではない。身長わずか110cm、「人類の定義」さえ揺るがしたフローレス原人、台湾の海底で見つかった「アジア第4の原人」澎湖人など、とくにアジアの「人類模様」は、目もくらむほど多種多様だった。しかし、彼らはすべて滅び去り、いま人類は「我々」しかいない。
 なぜ我々は我々だけなのか? 彼らと我々のあいだには、いったい何があったのか? 人類進化学の第一人者に導かれ、答えを追い続けた著者が出会った衝撃の仮説とは?
 「サピエンス以前」の人類史が、いまアジアから塗り替えられる! 
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000226686


【目次】
はじめに [003-006]
目次 [007-012]

プロローグ 「アジアの原人」を発掘する 013

第1章 人類進化を俯瞰する 023
  発掘の現場にて  ぼくたちとは似て非なる「人類」  度重なる発見に沸くアジア

第2章 ジャワ原人をめぐる冒険 049
  人類進化の5つの段階を考える  ハンブ樹上性だった「初期の猿人」  直立二足歩行が常となった「猿人」   脳が大きくなった「原人」――ホモ・ハビリス  アフリカを出た「原人」――ホモ・エレクトス  現代人に匹敵する脳容量をもった「旧人」  地域的多様性を失った「新人=ホモ・サピエンス  人類進化と地理的な分布の関係  系統樹から読みとる人類進化のシナリオ  「5段階の呼び名」は英語にはない

第3章 ジャワ原人を科学する現場 089
ピテカントロプスとの再会  P.e. 175M ONO 1891/93  「ピテカントロプスの予言」を追った男  ジャワ原人巡礼[4つの聖地」そしてサンギラン  タマネギ地層から出てきたサンギラン17号  「ミッシング・リンク論争」を決着させた男  いざフィールドへ!  「火山国」日本の意外な貢献  ジャワ原人が生きた風景  ジャワ原人の小説は書けるか  「生活の跡」が見つからない理由  出てきた地層が誰にもわからない!  ニューヨークでジャワ原人が見つかった!

第4章 フローレス原人の衝撃 135
  あまりにも小さな「人類」  「ホモ属の定義」をも揺るがす  リャン・ブア(涼しい洞窟)にて  アジアでナンバーワンの原人標本  本当に「新種の人類」なのか  「サイズの問題」と「距離の問題」   舞い込んだ依頼  子どもではない、では病気なのか?  「病気ではない」という明確な根拠   「誰」が小型化したのか?  「初期のジャワ原人が進化した」というシナリオ  脳のサイズを正確に測る  ジャワ原人の脳サイズも見直す  身体の大きさと脳のサイズの関係  歯についての謎

第5章 ソア盆地での大発見 185
  そこで、何かが起きた  衝撃の発掘現場  人類の骨かもしれない!  
70万年前から小さかった!  人間の「人間らしさ」とは?  あらためて想像するフローレス原人の世界  目もくらむ多様性

第6章 台湾の海底から 209
  「第4の原人」現る  「サルじゃない、人類だ」  きわめて特徴的な顎と歯  彼らはいつごろの人類なのか?  ハイエナが鍵をにぎる  「世界一」分厚い下顎  アジアの人類進化は謎に満ちている   ぼくたちはまだ多くのことを知らない

終章 我々はなぜ我々だけなのか 243
  なぜアジアなのか  あらためて、アジアの多様な人類  「接触の証拠」は出てこない  アジアはさらにわからない  戦いはあったのか  行動することで「過去に赴く」  どこにでも行ける人類  均質化の未来  宇宙への拡散  ジャワ原人がぼくらの中に?  「南デニソワ人」とは  ホモ・サピエンスが出会った者  「デニソワ人」という種にも疑問符  パズルのピースが嵌まった  我々は我々だけではないかもしれない 
謝辞(2017年11月 川端裕人) 272

監修者あとがき(2017年11月 海部陽介) [274-275]
参考文献 [276-279]
さくいん [280-283]



【抜き書き】

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  監修者あとがき 

 本書は、かつてアジアにいた複数の原人について詳しく解説した、初めての本といえるでしょう。「私たちホモ・サピエンスが現れる前のアジアに、誰がいたのか?」という問いに対する基本的な答えが、ここで得られることを期待しています。
 私自身の過去24年におよぶ研究成果を中心に展開されていますが、川端裕人さんという科学ジャーナリストの鋭くフレッシュな眼を通して描かれることにより、最近判明してきたアジア人類史のダイナミズムがダイレクトに伝わる一冊になりました。精力的な現地取材も含めて、これをやり遂げてくださった川端裕人さん、そして編集の山岸浩史さんに椥礼申し上げます。

 本書は、川端さんの私へのインタビューを中心に進んでいきます。そのためどうしても紹介する学説の偏りは避けられませんが、私が内容確認した際には、わかりやすさを犠牲にしない範囲で、正確性とバランスに配慮したつもりです。〔……〕
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読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 469.自然人類学
感想投稿日 : 2018年12月14日
読了日 : 2018年12月12日
本棚登録日 : 2018年8月30日

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