反・幸福論 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社 (2012年1月17日発売)
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本棚登録 : 464
感想 : 59
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本書は、『新潮45』で2010年12月~2011年08月に掲載された連載を加筆し書籍化したもの。著者は有名な保守派思想家の佐伯啓思。 

【感想】 
 数年前に『自由とは何か』(講談社現代新書)を読んで以来著者の本を遡っていくつかフォローしていた。その経験から言うと、本書は比較的出来が悪い。

 章ごとのテーマは最下部にある目次の通り。
 一番の問題としては、価値観や文化を語るにもかかわらず文字数が全然足りていない点がある。十分な理屈を展開できずに、昨今の風潮を否定している部分と著者の主張とだけがほとんど一緒になっているようなカタチ。これでは説得性が低い。
 また、連載エッセイが元のせいか、派手な概念や引用句がポンポン出てくるのに、読んでいてもそれぞれを必要とした話には思ずに少しとまどった。
 全体の印象としては、「今の日本人が忘れてしまった価値について考えてみたい」(本書008頁)という意気込みが思いっきり空ぶっている感じ。著者は、単なる懐古趣味のエッセイストでは決してないのに……。
 エッセイとしては外れの部類だと思う。


【目次】
はじめに 003
第1章 サンデル教授「白熱教室」の中の幸せ 013
第2章 「国の義を守る」という幸福の条件 037
第3章 「無縁社会」で何が悪い 061
第4章 「遁世」という幸せ 085
第5章 人間蛆虫の幸福論 111
第6章 人が「天災」といわずに「天罰」というとき 139
第7章 畏れとおののきと祈りと 167
第8章 溶解する技術文明 195
第9章 民主党、この「逆立ちした権力欲」 223
あとがき 251

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 9X4.評論・随筆
感想投稿日 : 2015年3月18日
読了日 : 2015年3月17日
本棚登録日 : 2015年3月18日

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