消費ミニマリズムの倫理と脱資本主義の精神 (筑摩選書)

著者 :
  • 筑摩書房 (2021年6月17日発売)
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感想 : 11
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 スケールの大きい論が、つまりヴェーバーの『プロ倫』やパレートの『エリートの興亡』のようなsocial science fiction(たしか森嶋通夫の表現)が、自分と同じ時代の人の手で書かれたこと、そして私がそれを読めることが嬉しい。

【書誌情報】
『消費ミニマリズムの倫理と脱資本主義の精神』
著者:橋本 努
シリーズ:筑摩選書
1,980円(税込)
Cコード:0333
整理番号:刊行日: 2021/06/15
判型:四六判
ページ数:368
ISBN:978-4-480-01731-4
JANコード:9784480017314

いくらモノを買っても幸福感は訪れず、世界各地で経済格差が広がり、環境危機が深刻化する―。資本主義社会が直面するこれらの問題を乗り越えるには何が必要か?身の回りのモノを捨て、最小限のモノで暮らすミニマリズムには、資本主義の支配力に抗して新たな文化を生み出す「脱資本主義の精神」に通じる回路があるという。今も圧倒的な支配力をもつ資本主義の「魔法」から抜け出すべく、「消費ミニマリズム」を多角的に検証し、その可能性を論じた画期的な思想書である。
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480017314/

【メモ】
・「はじめに」から一節だけ抜粋する。
"……本書で扱うミニマリズムは、プロテスタンティズムと比べるならごく小さな運動にすぎないが、私はこの同時代のミニマリズム現象が、現代の資本主義の解明にとって重要であると感じている。現代資本主義を解剖するための一つの現象として、私はミニマリズムに関心を寄せている。……"


【簡易目次】
目次 [003-006]

はじめに 009

第1章 消費ミニマリズムの流行とその背景
1‐1 消費ミニマリズムの時代 018
1‐2 主要な背景的要因 027
1‐3 背景にある社会変容 035
1‐4 考察 039

第2章 消費社会とその批判
2‐1 ロスト近代がやってきた 044
2‐2 ポスト近代社会は批判されてきた 052
2‐3 富を獲得することのバカバカしさ 065
2‐4 消費社会に代わる理想とは 072

第3章 正統と逸脱の脱消費論
3‐1 文化から仕事へ 089
3‐2 心理学と文化人類学の視点 104
3‐3 逸脱と新たな正統① ──精神・自然・環境 113
3‐4 逸脱と新たな正統② ──価値の創出・土着の発見 126
3‐5 逸脱と新たな正統③ ──幸福、快楽、上位文化 132
3‐6 複雑な問いをシンプルにする 150

第4章 ミニマリズムの類型分析
4‐1 ミニマリストの台頭 154
4‐2 ミニマリストの位置 168

第5章 ミニマリズムの倫理
5‐1 幸福になるための実験 182
5‐2 保守回帰 199
〔コラム〕 文豪たちのミニマリズム 211
5‐3 脱資本主義的な自己実現 212
5‐4 自己との和解 241

第6章 ミニマリズムと禅
6‐1 欲望の愚かさについて 264
6‐2 禅に向けて 271
6‐3 禅の思想 278

第7章 資本主義の超克
7‐1 オルタナティブなき批判 291
7‐2 代替システム 301
7‐3 電脳技術の可能性 310
7‐4 精神の拠点 318

あとがき [331-332]
注 [333-354]
参考文献 [355-366]

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 3XX.社会科学各論
感想投稿日 : 2022年1月16日
本棚登録日 : 2022年1月16日

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