子どもを伸ばす37のコツ (新書y 44)

著者 :
  • 洋泉社 (2001年11月1日発売)
2.00
  • (0)
  • (0)
  • (1)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 17
感想 : 1
1

 一般向けの新書(テーマは受験と子育て)を量産していた精神科医による教育論のひとつ。しかし雑な本なので別の本を読みましょう。

 日本人の性格を「ウブ系」と「したたか系」で二分して、「シタタカでないとこれから生きていけないよ!」と著者は述べます。ここはよくある大雑把なふかしです。古今東西どこにでもありそうな戒めです。
 これはわりと類型的な論の起こし方で、なんとでも言えてしまいます。まず「今は変化の時代だ」または「危機の時代だ」と根拠なく断言してから、持論を述べるわけです。お手軽ですね(私は賞味期限を過ぎた本をよく読むのですが、80年代の本にもしばしば見かけました。これを使うときには専門知識も度胸も不要なので、弱小評論家(←失礼)が大風呂敷を広げるときに使いがちです)。
 最近の著作では、日本人と欧米人を農耕民族型と狩猟民族型に対応させているので、こういう底の浅い二分法はお家芸っぽいとのちにわかりました。これを前提に進めた議論では、分析も提言も信頼性がないので私はあまり好みません。

 本書は一応教育論も載っています。例えば、子供の教育について知育はマラソンと同じ長距離走で考えよ(つまり勉強は一生続けていくのだから燃えつきさせるなということ)、「ゆとり受験」という考えも紹介。また、競争と共生のどちらも片方だけではだめだと中庸を説いています。確かにここは納得できる主張だと思います。実現は難しいのかもしれませんが国民のみなさん頑張りましょう。
 「私の子供は三人とも東大に入った」を持論の補強に使っています。しかし、「中山家の教育方針」よりも、「秀才の多い中山家の遺伝(子)」と「教育に不自由しない裕福な環境」という二大要素の方が、はるかに影響力が大きいはずです。この要素を無視して「中山家の教育方針」を推すのは過大広告です。読者への誠実さがありません。このことから本書を低評価にしました。
 教育についての内容は細かいアドバイスなどもう少し分量があるのですが面倒くさいので割愛します。気になる方は他のレビューを参考にしてください。

 巻末には和田(秀樹)氏との論争の愚痴(内容ではなく対応への話)が載っていますが、著者の面子というか都合なので不要です。新書でなく雑誌でやるべきでしょう。
 さて、著者の本は何冊か目を通したので個人的な感想を。この本だけを読む分には耳触り(語彙が足りない……)はいいです。ただし二冊以上読むと、途端に怪しくなります。著者の態度に一貫性がなく、以前の学歴主義からこの学歴不要的スタンスに変わるところに著者のシタタカさを見た、という感想をウェブ上でも見かけたことがあります(ほぼ私が言いたい感想でしたが先を越されていました)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 370.教育
感想投稿日 : 2013年8月26日
読了日 : 2012年8月26日
本棚登録日 : 2013年8月26日

みんなの感想をみる

ツイートする