計量経済学 (新経済学ライブラリ)

著者 :
  • 新世社 (1995年4月1日発売)
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1995年の初級テキスト。学部生向けに基本的な理論を解説している。なお、計量経済学とは諸経済変数の関係を数学的に考える分野です。

版元URL
http://www.saiensu.co.jp/?page=book_details&ISBN=ISBN978-4-915787-45-4&YEAR=1995


※下記目次は、書籍に掲載されている目次に準じました。版元サイト掲載の目次と章番号がずれています。

【目次】
編者のことば(竹内 啓) [/]
はじめに(1995年1月 山本 拓) [i-ii]
目次 [ii-vii]

1 計量経済学とは 001
1.1 計量経済学とは 001
1.2 計量経済学発展の歴史 008
1.3 本書の構成 011

  I 基礎編:回帰分析
2 最小2乗法:直線のあてはめ 015
2.1 データの整理 016
2.2 最小2乗法と回帰直線 019
2.3 回帰直線のあてはまりの尺度:決定係数 026
2.4 計算手順のまとめ 033
2.5 練習問題 035
2.6 補説 和記法の復習 036


3 単純回帰分析 043
3.1 単純回帰モデル 044
3.2 推定量αβの期待値と分散 052
3.3 推定量αβの優れた性質:最良線型不偏性と一致性 056
3.4 αとβの分散の推定 065
3.5 単純回帰モデルにおける仮説検定:t検定 069
3.6 変数選択の方法としてのt検定 076
3.7 予測 081
3.8 まとめ 086
3.9 練習問題 090

4 多重回帰モデル 091
4.1 多重回帰分析 092
4.2 多重回帰分析の推定値の解釈 100
4.3 多重共線性 104
4.4 自由度修正済み決定係数と決定係数のおとしあな 110
4.5 変数の過不足とその影響 113
4.6 定数項を持たない回帰モデル 116
4.7 練習問題 120


  II 応用編:計量経済学
5 モデルの関数型と特殊な変数 123
5.1 モデルの関数型 124
5.2 ダミー変数 132
5.3 トレンド変数 141
5.4 練習問題 144


6 F検定と構造変化の検定 145
6.1  F検定の考え方 146
6.2 線型制約の検定 149
6.3 構造変化の検定 153
6.4 練習問題 162

7 分布ラグ・モデル 163
7.1 分布ラグ・モデル 164
7.2 多項式ラグ・モデル(アーモン・ラグ・モデル) 168
7.3 幾何級数型分布ラグ・モデル 172
7.4 ラグ付き内生変数を含むモデル:部分調整モデル 177
7.5 練習問題 181

8 標準的仮定の意味と不均一分散 183
8.1 仮定3について 184
8.2 仮定4,5とβ【※ベータ・サーカムフレックス】の分散 185
8.3 撹乱項の不均一分散:簡単な場合 189
8.4 不均一分散モデルの検定と推定:一般の場合 195
8.5 練習問題 198

9 撹乱項の系列相関 199
9.1 撹乱項に系列相関のあるモデルとその影響 200
9.2 撹乱項が1階の系列回帰モデルに従う場合 204
9.3 撹乱項の系列相関の検定:ダービン=ワトソン統計量 206
9.4 推定法:コクラン=オーカット法 212
9.5 ラグ付き内生変数による系列相関の除去 216
9.6 ラグ付き内生変数を含むモデルの系列相関の検定 219
9.7 練習問題 222

10 説明変数と撹乱項の相関 223
10.1 確率的な説明変数 224
10.2 {Xi}と{ui}が従属である場合 227
10.3 説明変数に観測上の誤差がある場合 231
10.4 操作変数法 237
10.5 2段階最小2乗法 240
10.6 ラグ付き内生変数と系列相関 244
10.7 練習問題 246

11 同時方程式モデル 247
11.1 同時方程式モデル:構造型 248
11.2 構造方程式の識別性 251
11.3 誘導型 257
11.4 誘導型の推定と間接最小2乗法 262
11.5 構造方程式の2段階最小2乗法 269
11.6 モデルの解法と政策シミュレーション 275
11.7 練習問題 280


付録A 確率 282
A.1 確率の概念 282
A.2 確率変数と離散型確率分布 285
A.3 期待オペレーター:確率変数の平均と分散 287
A.4 結合確率分布:2変数確率分布への拡張 293 
A.5 連続型確率変数 304
A.6 正規分布とその派生分布 308

付録B 統計的推論:母集団標本推定量の性質 315
B.1 母集団標本母数(母平均母分散母標準偏差) 315
B.2 標本平均の統計的性質 323
B.3 推定と推定量の性質 326


参考文献 [335-341]
 計量理論編 
 実証分析編 
練習問題解答(抜粋) [342-348]
付表 [349-358]
 正規分布
 t分布
 χ^2分布
 F分布
 ダービン=ワトソン値の表
索引 [359-362]


【抜き書き】
・OLSの勉強用のメモ。
・以下、「α※」は【アルファのハット】の代用。最小二乗推定量。ギリシャ文字とハット(サーカムフレックス)の、組み合わせは見つからなかったので。


□pp. 44-45

――――――――――――
■確率的モデル
 このように,回帰直線が必ず残差をもたらすということであれば,われわれはこの残差 がどのような性質を持つものかを知らなければならない。
 さて、残差がいつも存在するという状況は,われわれに次のようなことを考えさせる。すなわち, (3.1)で与えられている決定的モデルは,必ずしもわれわれの分析に適したモデルではなく,最初からなんらかの誤差項を含んだモデルというものを考えるのが好ましいのではないかということである。すなわち、

  Y_i = α + βX_i + u_i (=1, 2, .…, n)  (3.3)

のようなモデルを考える。ここでは Y_iが(3.1)で与えられている決定的モデルに u_i を足し合わせて考えられている。ここで u_i はいわば“理論的な”誤差である。このモデルと先に示した(3.2)を比べてみると,変数間に対応がつくことは明らかであろう。すなわち、残差 û_i は理論的誤差 u_i の実現値とみなすことができる。この u_i を撹乱項と呼ぶ。
 このような対応のもとに,われわれは通常u, が確率変数であるということを仮定する(確率および確率変数になじみのない読者は, A.1節,A.2を参照されたい)。ゆえに (3.3)で与えられるモデルを確率的モデルと言う。このようなモデルのもとでは,回帰分析によって求められた α※,β※,û_i なと
の性質を,数学的,統計学的に厳密に考察することができるようになる。本来,回帰分析はそのような考察まで含むのであって,前章で扱った内容はの第1段階にすぎない。
――――――――――



□pp. 50-51
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■撹乱項の経済学的意味
 さて,(3.5)で与えられたようなモデルは,われわれが通常,経済学の教科書で学んでいる経済モデルとは多少形が違う。経済理論で与えられるモデルは,一般には撹乱項u.を含まない決定的モデルである。すなわち,
  Y_i = α + β X_i (または Y= α + βX)
である。当然のことながら、純理論的分析においては経済関係の抽象化を行なっているのであるから,例えば上式で示されるような関係が正確に成り立っている,という前提のもとに議論を行なう。しかしながら,統計的に扱う場合には,(3.5)で示されるように撹乱項 u_i が含まれている確率的モデルについて考える。以下では,撹乱項が生じる要因の経済的意味づけ,または裏づけを考える。
 まず第1は,経済理論自身が不完全であることである。すなわち,撹乱項を含まない上式のような表現は,程度の差こそあっても抽象化にすぎないので,本来は所得X 以外に資産Z という説明変数が必要であるかもしれないのに,それを誤って除いている可能性がある。もっとも,所得 X が最も重要な説明変数であれば,それだけを取り出して分析した方が便利な場合もあり,純理論的分析においてはこれは必ずしも誤りではない。しかし現実的には,それは一種の抽象化にすぎないわけであるから,正確な表現をするとすれば、除かれた変数の代用として撹乱項を考えることが必要となる。例えば,関数の場合は,その中に流動資産の影響,過去の消費の影響などが含まれる。
 第2は,モデルの定式化が不完全であることである。すなわち,われわれが想定した線型な関係は必ずしも正しくないかもしれない。真の定式化は,ある場合には非線型,例えば対数線型の関係であるとか,または変数の2乗とか3乗などを含むような形になっているかもしれない。このような場合に線型な式を使うのは一種の近似であるから,そのために起こる誤りが u_i に帰せられていると考えることができる。
 第3には,理論モデルと計量モデルの変数の対応が不完全であることである。例えば,理論モデルでは所得,消費というかなり抽象的な言葉(概念)を用いるが,実際にデータを集めるとなると,所得と言っても様々な定義による所得のデータが存在する。例えば国民総生産,国民所得,可処分所得など色々あり,どれを選択すればよいかという問題がある。また,恒常所得仮説を調べる時,恒常所得という理論的概念にうまく対応するデータがあるかどうかという問題が生じる。このような誤りも撹乱要因となるであろう。
 第4には、データの集計の問題がある。例えば,ミクロ経済理論は個々の経済主体(家計,企業)についての行動に対する仮説をもたらすが,個々の家計,企業のデータは乏しく,国全体とかある地域全体についてのデータを用いざるをえない。このような場合は,個々の行動と,まとめられた場合の行動が同じであろうと想定することが多い。当然そこには,そのようなまとめあげ(集計)に伴う誤りが生じ得ると考えられ,それらの誤差が撹乱要因となるであろう。
 最後に,測定上の誤差という問題がある。すなわち,われわれの得られるデータは残念ながら必ずしも正確ではない。物理実験などにおいては非常に正確なデータが得られる可能性があるが,経済データにおいては,その推計は一般に標本調査による場合が多い。このような場合には,推計されたデータそれ自身が誤差を含んでいる可能性がある。 
 以上のように,理論モデルとして分析する場合には問題にならないが,実際にデータを集めて分析する場合には生じるであろうという誤りが非常に数多く存在する。撹乱項はそれらの誤りをすべてまとめて u_i と置いたものと考えればよいであろう。
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読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:   331.19 経済数学・経済統計・計量経済学
感想投稿日 : 2014年3月18日
読了日 : 2015年7月28日
本棚登録日 : 2014年1月5日

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