満州と自民党 (新潮新書 142)

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  • 新潮社 (2005年11月1日発売)
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メモ
ロシア通で満鉄調査部にいた宮崎正義がソ連の計画経済を規範にして作った「満州産業計画五か年計画」を実行したのが、商工省のキレものだった岸信介をはじめとする若き官僚たち。彼らはここで実務経験を積んだ。満鉄の力を弱め、日産を引き込んで一大コンツェルンを作り上げる。これが満州重工業開発株式会社。主要人物は2キ3スケ(星野直樹、松岡洋右、鮎川義介、岸信介)

戦後、岸は巣鴨に収監されていたが、東条内閣の閣僚のうちなぜか唯一無罪で釈放される。アメリカ軍との密約説などがあるが、真相ははっきりしない。

政治活動を再開した岸の政治信念はアジアの盟主を目指すという点では変わらなかったが、各国のナショナリズムの動きを尊重するという柔軟性が加わっていた。これが東南アジア賠償問題である。

自民党の55年体制が確立され、権力闘争に勝利すると岸は満州で培った計画経済的な手法を使って経済成長を図る。輸出入の管理、機械工業分野の重点的成長などである。こうした岸の政策を支えたのが満州人脈だった。

高度経済成長を支えた政財官のシステムは戦前に根を持つもので、そこに向かって満州人脈を率いたのが、敗戦を生き延びた岸だった、という話。

感想
・岸が満州にいたのも、総理大臣だったのもそれぞれ3年ほど。戦後復興に満州の経験や人脈が影響力を持っていることは分かったが、それがどの程度のものなのか、はよくわからない。様々な要因の一つだろうと思う。
・55年体制が崩壊した後の政治はどうなっているのだろうか。さんざん漂流したうえ、結局安倍長期政権になっているという現状を、長期的な視点からみていくと面白いかも。
・さくっと読める。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治・経済
感想投稿日 : 2019年4月21日
読了日 : 2019年4月21日
本棚登録日 : 2019年4月21日

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