今を生きる思想 ハンナ・アレント 全体主義という悪夢 (講談社現代新書)

  • 講談社 (2022年9月15日発売)
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感想 : 29
4

アーレントを100ページで紹介する入門書。

アーレントは屈折の多い思想家なので、100ページにまとめるのは無理だろうと思いつつ、読んでみたら、かなりいい線でまとまっていると思った。

もちろん、議論はかなりフォーカスされていて、「全体主義の起源」を中心に説明されている。あとは、それに関連するところとして、「人間の条件」がすこし、ポスト・トゥルースの時代に参照されることが多くなった「真理と政治」や「政治における嘘」に言及。そして「エルサレムのアイヒマン」を紹介という感じかな。

つまり、全体主義の歴史解釈とそれと比較的関連性の高いものにフォーカスされているということ。アーレントのコアな政治哲学的なところはあまり言及していないので、まとめることができたということかな?

とくに「権威主義体制」、「専制」と「全体主義」の違いをイメージ図で整理しているところが、秀逸。

アーレントの本はある程度読んでいるので、そこまで驚く話しはないのだが、面白かったのは、「共通感覚」や「判断」の話しが「政治」や「活動」との関係で語られるところ。

「判断」といえば、アーレントの書かれなかった「精神の生活」の第3部を思い起こさせる。「判断」が、「活動」で生まれる公的空間や政治、そしてそれを定着化させる政策、事実の真理などなどと関係づけられて議論されるところが頭の整理になった。

アーレントの入門書としては、わかりやすくてよいのではないかと思う。

ただ、前半の「全体主義の起源」関係の説明が、歴史的な事実の説明なのか、アーレントの解釈による説明なのか、著者の読解による説明なのか、あいまいな印象があった。基本、アーレントの説明についての著者の解釈なのだろうと思うが、もうすこし原著との関係を明示してほしかった。(これもやりすぎると読みにくくなるのだが。。。)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年12月28日
読了日 : 2022年12月28日
本棚登録日 : 2022年12月28日

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