存在論的、郵便的: ジャック・デリダについて

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  • 新潮社 (1998年10月30日発売)
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感想 : 47
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東 浩紀さんのデビュー作。

どっぷり本気の本格的なデリダ論。

デリダって、何言っているのか、全然、分からないよね。なんだけど、それでも初期は、それなりに通常の哲学のなかにいたらしい。で、70年代以降、哲学とも、文学ともなんとしれない言葉の遊び的な本がでてくる。絵に描いたようなポストモダンな哲学。

つ〜、印象なのだが、「どうしてデリダはあんな難しい変な文章を書いたのか」みたいな素朴な問いを深ぼっていく。

スタイルは、デリダ的なものでなくて、結構、ロジカルに一つ一つ、詰めて行く感じ。デリダの解説書って、デリダ的なスタイルで書かれることも多いので、これはいいな。(といっても、速読していると、すぐに流れが分からなくなるのだが)

個人的には、デリダは、90年代以降の政治的なテーマを扱った「マルクスの亡霊」や「法の力」みたいなのを読んで、はじめて興味をもったのだが、この本では、これらの著作は後退したという評価かな?

デリダの二項対立的な世界を脱構築しつづけるという感じから考えると、デリダの政治的な著作は、「来るべき民主主義」みたいな民主主義=正義=脱構築ということになっていて、後退といえば、後退である。

が、二項対立って、人間の思考の基本パターンなので、それを脱構築しつづけても、そこから逃れることはできないんだよね。(もちろん、デリダはそんなこと分かっているのだが)

ならば、二項対立の限界を知りつつ、あえて二項対立をしっかり深めていくというが大事じゃないかと最近は思っている。

そういうわたしにとっては、「法の力」と「マルクスの亡霊」は、ひびく本なのだ、ということをこの本の主張とは別にあらためて確認した。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年5月2日
読了日 : 2016年1月17日
本棚登録日 : 2017年5月2日

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