盲目の時計職人

  • 早川書房 (2004年3月24日発売)
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本棚登録 : 569
感想 : 33
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私たちはなぜここにいるのか。
なんてことを考えられるほど、生命はなぜかくも複雑に、いわば合目的的に進化したのか。
というのは、最大の謎であるが、実は、その問いは、ダーウィンが既に答えてしまっている。にもかかわらず、多くの人はまだこの問いが未解決であると思って、あーだ、こーだ、言っている。生命進化は、ランダムな突然変異と自然淘汰による漸進的な変化以外にありえないじゃないか。神によるデザイン論はいうまでもなく、形質遺伝のラマルク主義も、グールドの「区切り説」も、全部、邪説か、ダーウィン主義のマイナーなヴァリエーションでしかない。喝!

といった本です。私は、「私たちはなぜここにいるのか」問題に興味をもって、この本を1年くらい前に手に取ったのだが、著者の論理展開にやや強引なところを感じて、途中で放棄していた。その後、複雑系やら宇宙論やらを読んで、再び、この本に帰ってきた次第。相変わらず、強引な語り口は気になるものの、いろいろ読んだ後では、著者の見解は、真っ当な標準学説だということが分かった。ある意味、「生命は生じるべくして生じ、進化すべくして進化した」というニュアンスの強いカウフマンでさえ、進化の目的性といったことは考えておらず、ドーキンス的な「ランダムな突然変異と自然淘汰による漸進的変化」のフレームのなかに収まりうるものなのかもしれない。

でも、これで生命の起源や進化について、納得したかというと、やっぱりまだまだだな。生命が発生し、ここまで複雑に進化するということが、著者のいうようなランダム性と自然淘汰だけでなされるということに対する違和感はどこまでも続くのであった

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年4月30日
読了日 : 2008年4月23日
本棚登録日 : 2017年4月30日

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