ディープ・デモクラシー: 〈葛藤解決〉への実践的ステップ

  • 春秋社 (2013年6月22日発売)
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ミンデルの待望のグループワークに関する本の翻訳。
(「紛争の心理学」もグループワーク関係であるが、抄訳で現在品切れ中)

ミンデルは、プロセスワークの対象を、個人から、カップル、グループ、地球と拡げて行ったわけだが、大きなグループを対象とした、しばしば紛争状態にあるテーマについてのワールドワークは、大きな気づきが生まれる可能性があると同時に、トラウマになっていることがあらわれて「傷つき」になってしまう可能性をもっていた。

というわけで、一応のステップはあるものの、非構成的な要素がつよいワールドワークを、もう少し構成的で、ステップ的におこなう「プロセスワークのオープンフォーラム」という形にして、提示しているのがこの本。

構成としては、2部に分かれている、1部ではかなりマニュアル的なステップが記述してあり、2部では、ファシリテーターのあり方といったところが書いてある。どちらも、すごくいいです。ミンデルの本で、ここまで、具体的で、実践的で、分かりやすく、かつ深い(と思うことができる)本ははじめてである。

とくに、なるほど感が高かったのは、最後の「エルダーシップ」のところで、ちょっと引用すると、
「多くの多文化的なエルダーたちは、生い立ちの中で深く傷ついていた-社会的な力によって剥奪され、屈辱を受け、虐待されていた。傷つきを経験しているという特別な素性は、ある意味で、ユングのいう「傷ついた治療者」という個人セラピストに対するイメージを思い起こさせる。これは、自分自身の苦しい経験を乗り越えたものだけが、他人を支援する人になれるということを意味する」
という感じ。

ファシリテーションをやっている人で、「ファシリテーターの中立性」みたいなのに限界というか、矛盾を感じている人は、ぜひ読んで欲しいな。

ミンデル関係で、最初に読むには、やや難しいかもしれないけど、ミンデルのワークショップの逐語記録の「うしろ向きに馬に乗る」とあわせて、読むとイメージがしやすいかもしれない。

ちなみに、「プロセスワークのオープンフォーラム」という表現があるのは、プロセスワークではない「オープンフォーラム」というのが、アメリカにはあるというわけですね。アメリカというと、資本主義で、個人主義で、自己中心的で・・・というイメージが最近は強いが、やっぱり、民主主義の国なんですね。で、そのルーツは、イギリスやフランスの民主主義や自由主義的な思想であるとともに、ネイティブ・インディアンのダイアログ的な話し合いの場というところからも流れているんだろうな、と、思ったりした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年4月30日
読了日 : 2013年12月21日
本棚登録日 : 2017年4月30日

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