七編のうち特に好きなのは「ヒッチハイクごっこ」「老いた死者は若い死者に場所を譲れ」「ハヴェル先生の二十年後」「エドワルドと神」の四編。
「ハヴェル先生の二十年後」ではハヴェル先生や若きジャーナリストは虚栄心のために愛する女性への愛を失ったり、取り戻したりと身勝手だ。また、「エドワルドと神」のエドワルドは、目的達成の目の前にして途端に対象への興味を失ってしまう。そのような冷めた心情の描写が物凄くクール。
クンデラの描く人物は、心のうちに思想や信念、自分の設けたルールを持っているにも関わらず、それが作品の中であっさり(といってもいいように。しかし単純ではない。)と覆ってしまう。それが浅はかだと一刀両断することも出来るだろうけれど、ここに小説の面白みを感じられるし、一部共感する。
ただの性愛に関する短篇集ではなく、宗教や政治、哲学的な思想に絡めて登場人物の立場や感情が設定されているのが、これらの作品に色を与えていると思うが、そのあたりは難しく感じられてよく理解できなかった。これから何度か読み返し、味わいたいと思う。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2013年4月27日
- 読了日 : 2013年4月27日
- 本棚登録日 : 2013年4月27日
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