聖者は海に還る (幻冬舎文庫 や 15-6)

著者 :
  • 幻冬舎 (2008年4月10日発売)
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父親を亡くし母親は内心自分を疎んでいると察した少年は母胎回帰願望を抱き、それは歪んだ性衝動へと到り野生猫の惨殺という異常行動に表れる。それを知った母親は息子に催眠療法を受けさせ、狂気を封印された少年は、自分に催眠療法を行った恩師の下で天才カウンセラーへと成長する。しかし職場が私立高校になったとき、シングルマザーの養護教諭と恋愛関係に陥り、カウンセラーとしての使命に疑問を持ち始め、恩師に辞職の相談をしたところ、怒った恩師から嘗て封印された性衝動を解放されてしまう。その結果、養護教諭を殺害しかけるも彼女の愛に包まれて思いとどまったものの、精神分裂に陥り心が死んでしまい、愛する女からの呼び掛けにも応じられないただ呼吸しながら生きているだけの入院患者となってしまう。養護教諭は息子とそのお腹に宿った彼の子の3人で、いつか必ず彼が心を取り戻してくれることを信じて待ち続ける決意をして完結。

つまらなくはないけど正直微妙。定岡療法そんなに上手くいくのか?と終始感じた。舞台設定は現代日本そのものリアル路線なのに、肝心の催眠療法の部分だけちゃっちいフィクションとして浮いていた気がする。母親との関係性が拗れるとか、親の愛情にきちんと包まれるこてができないとか、やはり幼少期の愛情飢餓がその後の人格形成に大きな影響を及ぼすんだね、という点はリアルだったので尚更に。
にしても養護教諭は大丈夫なのかな。死んだ旦那の残した死亡保険金+自分の収入で子供二人を育てていくことはまだ可能だとしても、一度でも自分を殺し掛けた男でしかも精神分裂病で一生入院しなきゃならん奴の入院費用まで面倒見ることになるとしたら金銭的にきつくならんか?と妙に現実的に感じてしまった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ホラー・サスペンス
感想投稿日 : 2023年2月12日
読了日 : 2023年2月11日
本棚登録日 : 2023年2月11日

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