大正15年生まれ(=昭和元年)の著者の幼年時代から今日に至るまでの自伝エッセイ集。2011年2月(たまたま東日本大震災の前の月)掲載の日経新聞「私の履歴書」をベースに別紙掲載のいくつかのエッセイを加え加筆したものだとのこと。37の小品の一つ一つが人生の断片のスケッチで、印象的な数々のエピソードや挿絵と相俟って、まさに絵のある自伝となっている。
著者はこの本の中で、記憶力は創造性とは関係ないというようなことを述べられていたが、この本を読む限りご自身の記憶力は相当なものだと感じた。最後の章でご自身の空想癖(妄想とは違う)について述べられているが、この空想力こそが記憶力と創造性の触媒として働いているように思った。
特に印象的な章を一つ挙げるとすれば、「つえこのこと」を挙げたい。恵まれない境遇にありながらいつも笑顔を絶やさなかった幼馴染みのつえこに六十年ぶりに再会する話だが、著者の幸福観、人間観がよく見て取れて、著者の絵を見るときのように優しい気持ちになれる。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2016年5月1日
- 読了日 : 2016年4月30日
- 本棚登録日 : 2016年4月30日
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