日本の国防を考えさせれるシミュレーション小説。
リアルすぎてついていけないところも数多いですがすごく考えさせられる小説でした。
有事法制がない2001年に執筆されており、有事法制が2003年に整備されたとはいえ、今、有事が起こったら、結局はこの小説のようなことになるのでは?と思い恐怖を感じます。そもそも、今の有事法制でこのような事態は防げるの?その辺も理解していないのは自分だけではないでしょう。
ストーリーとしては、原発のある敦賀半島沖に北朝鮮の潜水艦が漂着し、対戦車ロケット砲で武装した11名が上陸します。警察が出動しますが、圧倒的な武力の差に太刀打ちできず犠牲者が続出します。普通、映画の世界では、こんな時には自衛隊でしょって思うわけですが、有事の際なのに自衛隊が出動できない。災害の際には出動できるのに..そんな現実を見せ付けられることになります。そういった自衛隊の出動について、自分たちの責任のなすりあいをする政府、官僚。一方での現場での命をかけたやり取り。あまりのギャップにつらくなります。
ようやく、自衛隊の出動が決断されますが、ここでも、相手が撃つまでは発砲できず犠牲者がでます。
目の前に敵がいるのに、発砲するためには総理大臣の許可がいる!現場つらすぎます!!交戦規定もない。あいまいな中で、何を信じて命を懸けなくちゃならないのか..
そして、北朝鮮から新たな潜水艦が..潜水艦をどうするのか?中国の動きは?アメリカは?まさに一色即発というところでくだされる決断は...
最後は、あっけなく終わってしまうのですが、それまでの過程がやはり恐ろしい、リアル感が十分伝わってきます。
有事の際に、日本は本当に国民を守ることができるのでしょうか。
戦争はしない、けれど、自分たちの命は守ってほしい。戦争と防衛という難しい課題を正面から見せつけられ、考えさせられる小説でした。
そう、フィクションであり続けてほしい。そして預言書にならないでほしい。
そんな物語です。
- 感想投稿日 : 2014年6月7日
- 読了日 : 2014年6月7日
- 本棚登録日 : 2014年6月7日
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