宮崎駿の「風立ちぬ」で高原療養所に入った菜穂子が二郎に会いに来るシーンのモチーフになっている。二郎と菜穂子が軽井沢のようなところで再会するところは著者の小説「風立ちぬ」の方がモチーフになっている。
映画と違って、この小説では菜穂子が高原療養所を抜け出して東京に戻ってきたのに、夫は母親との静かな生活を乱されたくなくて家に連れて帰らずホテルに泊める、勝ち気な菜穂子はなぜ自分が東京に戻ってきてしまったのか自分でも分からないし、夫の迷惑そうな態度にも「雪に心が躍ってつい帰ってしまっただけ。明日すぐ帰る」と気丈な態度をとる、とロマンチックなストーリーではない。とにかく勝ち気。不治の病である結核に冒されつつも、やっと手に入れた不自由な自由を楽しめる勝ち気。もちろんその勝ち気さは卵の白身みたいなもので、黄身の部分に包まれたか弱さ、寂しさ、純粋さが見え隠れする。
ところでこの小説は三部構成と言っていいと思う。第一部は菜穂子の母親の日記に綴られた菜穂子、第二部は菜穂子の別荘の近所に住んでいた幼馴染の都築明の視点で描かれた菜穂子、そして第三部は菜穂子自身の視点で描かれた菜穂子である。残念ながら第一部と第二部は消化不良だった。
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- 感想投稿日 : 2023年12月11日
- 読了日 : 2013年12月15日
- 本棚登録日 : 2023年12月11日
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