上級国民/下級国民(小学館新書)

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  • 小学館 (2019年8月6日発売)
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言わずもがなタイトルにある「上級国民」と言う単語は、池袋で元高級官僚が起こした事故からきている。
先日読んだ「無理ゲー社会」と被る部分は多い。
現代社会は、上級国民/下級国民、正社員/非正規、モテ/非モテなどの分断社会である。

面白かったところをいくつか。

・団塊の世代を守る

平成は、団塊の世代の雇用を守る30年
バブルが崩壊しようがリーマンショックがあろうが、正社員の割合は変わらなかった。
割を食ったのが若者で、職にあぶれ、非正規雇用に流れていった。

正社員を過剰に保護し、労働市場に流動性がなくなる。
会社は「いったん入ったら出られない」タコツボと化してしまう。
これにより新卒でたまたま入った会社の業績という「運・不運」で人生が左右されてしまう。

平成が終わり、団塊の世代が労働市場から退場したため「働き方改革」が進み始めた。

令和は、団塊の世代の年金を守る20年になる。
年金問題が改革されるのは、団塊の世代がこの世から退場してからとなる。


・アメリカは黒人とプアホワイト(白人なのに貧乏)の対立

アメリカには、アファーマティブアクションと言う制度がある。
たとえば医学部の入学試験では、黒人は白人やアジア人よりも低い点で入学できる。
これはアメリカ国民の周知の事実。

そのため重篤な病気にかかった際に、黒人医師は避けられる。
黒人患者ですら黒人医師を避けるのだとか。
実力で医師になった黒人は災厄以外のなにものでもない。

そして、プアホワイトは自分たちも貧乏だと言うのに、白人であるがため一切優遇されない。
ここに対立があるのだとか。日本にも似た構図がある。


・ベーシックインカムが破綻する理由

世界には年収8万円で生活できる国もある。
そんななかで、日本がベーシックインカムを導入し、「日本人」であれば無条件に月額20万円が支給されるとする。
現在の日本の法律では、日本人から生まれた子供は無条件で「日本人」として認められる。
日本男性が海外で婚姻し、子どもができた場合、大使館・領事館に提出するだけで子どもは日本国籍がもらえる。

アフリカなどの新興国で、女性は生涯に10人前後の子どもを産む。
そんな女性が日本人男性と結婚して、子どもを10人産めば、年収2400万円になる。
そうなれば男は海外で子どもだけ作り、楽して暮らそうとするだろう。

こうした事態を避けるには「日本人」を厳密に定義する必要がある。
しかしこの考えは「優生学」そのもので、世界から人種差別国家とみなされてしまう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年5月29日
読了日 : 2023年5月26日
本棚登録日 : 2023年5月3日

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