ポ-ル・デルヴォ-の絵の中の物語

  • 朝日出版社 (2011年9月1日発売)
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感想 : 5
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ヌーヴォー・ロマンの旗手、ミシェル・ビュトールがポール・デルヴォーの18枚の絵画をモチーフに物語を編んでいる。

ミシェル・ビュトールは、ヌーヴォー・ロマンの作家たちのなかでも高い芸術性と教養を備えた人物であった。

『心変わり』は、進む列車に乗り込んだ主人公の心の変異が時間軸を巧妙に操りながら構成されている小説である。

ミシェル・ビュトールは、『時間割』や『心変わり』などの小説にとどまらず、評論やエッセイ、詩、旅行記ほか、多ジャンルの作品を発表してきた。
画家とコラボレイトしている作品も複数あり、本書にまとめられたものもその一部である。

ポール・デルヴォーは、言わずと知れたベルギーのシュルレアリスムの画家。多くの個性的な作品を遺した。
デルヴォーの絵画は、幻想的で無機質である。一度見たら忘れられない作品ばかりだ。
無表情の髪の長い美しい女性たちが、多く登場する。立位であったり、座位であったり、臥位であったりするが、彼女たちは例外なく動きがない。
背景は、屋内外を問わず、昼夜も問わない。ギリシア神殿様の建造物がみられたり、山や木や階段や、列車や、シャンデリアなど、デルヴォーの絵にはデルヴォーの背景とデルヴォーの女で構成されている。

デルヴォーの作品は、非常に幻想的であるため、物語を紡ぎやすいオブジェクトだ。

ジュール・ヴェルヌの『地底旅行』の鉱物学教授であるオットー・リーデンブロックは、デルヴォーの絵画によく登場する。ヴェルヌ(またはリーデンブロック教授)とデルヴォーとビュトールは、息もぴったりであった。

残念なのが、デルヴォーの絵がモノクロで、ビュトールのテキストも数ページに渡り、一体化の愉悦が減ってしまっている。カラーで、堪能できれば幸せだったナァ(笑)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年1月21日
読了日 : 2012年1月21日
本棚登録日 : 2012年1月21日

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