なんともマニアックそうなタイトルなので、どんな種類の本なのかと開いてみたら、ユーモアたっぷりでテンポもよくアッという間に一気読み。
たしかに主人公は失恋した元カノとよく似たお人形と同棲後、結婚するのだが、病的で偏狂的な印象ではなくあくまでもユーモラスな成り行きの帰結なのでただ面白く読める。
主人公は大手保険会社に勤める独身サラリーマン。26歳の彼には交際1年の彼女がいたがあっさりフラれる。
クレーム処理のために訪れたポルノショップで元カノとそっくりのダッチワイフを目にし、購入して同居生活をはじめる。
不運な彼の生活は、その人形によって徐々に潤いのあるものになり、ダッチワイフの存在の位置づけも次第にアップしていく。
彼女の名前はシーラ。
シーラは時々、空気を注入してやること以外、実に素直で無口で手間をかけない女性であり、彼は彼女をオペラに連れて行く。
それがきっかけで彼は職を失い、お人形と結婚式を挙げて新婚旅行に出かける。
そこで新たな出会いが彼に訪れる・・・・
失笑噴飯というか、笑止千万というかとにかくとても面白く滑稽なのに、憎めない主人公に情がうつってしまうふしぎな小説。
ルイ=トマ・ペルティエは1965年カナダのケベック出身。
ケベックの州都モントリオールがこの小説の舞台になっている。
ケベックの公用語はフランス語。フランスの入植の名残だが、この小説にはフランス的な匂いがたちこめる。
著者のルイ=トマ・ペルティエは他にも『もしも地面が丸かったら』とか『離婚旅行をするとしたら』とか『もしも人形に歯があったら』など面白いタイトルの書物を出しているらしい。邦訳が待たれる。
- 感想投稿日 : 2012年2月1日
- 読了日 : 2012年2月1日
- 本棚登録日 : 2011年10月1日
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