『オペラ座の怪人』や『黄色い部屋の謎』などの原作者であるフランスの第一級のストーリーテラー ガストン・ルルーの短編集。
収められている8篇は、文字通り短編で短いものではあるが、1篇1篇読み応えがあり、長編にみられるガストン・ルルーのエキスを濃縮したような趣の作品群である。
5篇は老船乗りたちが集まって茶席を囲み、各自が奇談怪談を語り合うという形式をとっているが、内容はそれぞれ独立しており、他3篇もふくめ、ルルーの次々と繰り出す幻想的な恐怖の罠の糸にがんじがらめに巻かれてしまう。
ジュネーブの名門の家に生まれた女性は、エヴィアンである青年と知り合い結婚する。ふたりは愛し合っており、幸せな毎日を送っていたが、青年の父が亡くなり、家業を継ぐため実家のシュヴァルツヴァルトに戻った。
夫は実家に帰ってから、不審な行動をとるようになり、妻はあるとき、小屋で血にまみれた衣服と斧を見つける。
夫を殺人者だと思った妻は恐怖に身が凍り、地元で起きた殺人事件に夫が関与していると訴えたが、実は夫は死刑執行人だった。そうとはしらずに結婚し、夫が自殺したあとも過去を断切れることができず黒衣装を纏う女性の話を回想風に描いた『金の斧』
片腕の船長が片腕を失った戦慄の理由とは?『胸像たちの晩餐』
コルシカの復讐談から材をとった斬首されても死ななかったこの世のものとは思えないほど美しい女性は首にビロード飾りの首飾りをしていた。なぜなら、それをはずせば首が落ちてしまうから。『ビロードの首飾りの女』
かわいく愛らしい娘オランプ。彼女が年頃になると結婚の申し込みが殺到した。オランプは申込者に順位をつけ一位の相手と結婚したが、夫はすぐに死に、二位の相手と結婚するがまた死別。次々と夫が死んでいく新妻のオランプ。『ノトランプ』(われらのオランプ)
など、ルルーの巧みな戦慄のストーリー8篇。
訳者は飯島宏さん。
- 感想投稿日 : 2021年12月1日
- 読了日 : 2021年12月1日
- 本棚登録日 : 2021年12月1日
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