上田早夕里さんの本が読んでみたいと思い、koboで探してたらこれだけ無かったので、紙本しかないんかなーと思って購入。Kindleにはあるんやね。
冒頭からずっと緊迫感のあるシーンが続き、没入感があった。
主人公・水島はじめ各キャラクターの内面描写が見事で、ヒロインのアデリーン、悪玉のグレアム、恋敵から協力者へ立場が変わっていくユ・ギヒョンなど、脇役にいたるまで人物造型が良かった。
璃奈好きだったな……最初のほうに死ぬ役回りだったのが残念だ。
ご都合主義的なハッピーエンドには至らず、ほんのりビターな幕切れを迎えたのも好みだった。
極秘研究をしているのにアデリーンにさらっとカルテを盗まれるセキュリティの甘さは、まあ二十年前の作品だから目をつぶるとして、モーツァルトをバロックの作曲家と書いてしまうあたりに少しひっかかった。まあ、幼少期はバロック期と言ってもギリ許されるかもしれない、モーツァルトは神童だから……
タイトルにもなっている火星ならではの音楽ダーク・バラードがさほど効いてこなかったのがもったいない。
文章は直喩過多な印象を受けたが、全体的には無駄がなくきびきびとしていて好みだった。
また他の作品も読んでみたいところ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
近未来&SF:日本
- 感想投稿日 : 2023年8月12日
- 読了日 : 2023年8月12日
- 本棚登録日 : 2023年8月12日
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