姿を消した「戦果アギヤー」の英雄オンちゃんの親友・弟・恋人たちを軸に、戦後から返還あたりの沖縄を描いた直木賞受賞作。
ウチナーグチと英語のルビがせめぎ合う熱っぽい文体、何が起きてもあくまで明るい語り口は、私がイメージする沖縄そのものだけれど、なんと作者は東京出身だというのでたまげた。
なぜ「宝島」なのかが明らかにされるラストの美しさは、もしかしたらよその人間だからこそ持てる視点なのかもしれない。
江戸時代に浦賀に来たペリーは、帰国後に琉球と小笠原諸島を占領すべきだと主張していたらしい。そんな大昔からアメリカにほしがられていた土地だから、私は米軍基地について「沖縄の人には気の毒だとは思うし、なくてすむならないほうがいいが、なくてはならないなら地理的に沖縄に偏ってしまうのはどうしようもないのかな」くらいにしか思ってなかった。
なくてはならないものなのかどうかは分かってないし、それを真剣に考える気もなかった。所詮は対岸の火事だからだ。反省した。たぶん、沖縄以外の地域に住む日本人の多くが、私と似た無関心さを抱いているのではないかと思う。(無関心を抱く、とは変な言い方だけど)
私は四国の出身で、漠然とみんなと同じ日本人だという自己認識がある。たぶん現代の沖縄の人たちだって同じなんだろうが、私から見た沖縄は「日本だけどちょっと違う」と思っていた。気候、文化、言葉とか、そういうものが。
だから沖縄の人たちが苦労してても知らんぷりでいいってことじゃないのは分かっているけど、この「ちょっと違う」という認識が、沖縄の人たちに厄介事を押しつけていられる根っこのところにあるような気がする。
でも、もし米軍基地を作るのにうってつけの場所が四国だったとしたら? たぶん本州の人たちは、「ちょっと違う」からと平気な顔をして同じことをするんだろうと想像して、あながち他人事でもないなあと思った。
東京人が書いた本作が沖縄の人々の本質を捉えているのかどうかは、沖縄の人でなければ分からないだろう。もしかしたら、「こんなん全然違う!」と思うのかもしれない。ただ少なくとも、上記したようなことをひとりの読者に考えさせたという点においては、意義深い小説だ。
これがノンフィクションとかドキュメンタリーの類だったら、きっと私は、多くの日本人は見向きもしなかった。本作が直木賞をとって、注目されるのはたぶん沖縄にとって良いことだと思う。フィクションの、エンターテインメントの力というものを思う。
作品の筋とはだいぶそれた感想を長々と書いた。
レイは好きになれんなあ~。まともに職に就いたグスクのほうが好感が持てたが、ヤマコをアレしたあたりでレイの好感度が地に落ち、さらに意図してなかったとはいえ最後にウタを巻き込んだあたりでホントいいとこねえなおまえ……てなってしまった。まあ、ウタは危なかっしいなと思っていたけど……
ひどいことをされて許さず、けれどもその怒りを抱えて前向きに生きるヤマコは沖縄の人たちのあり方を体現しているようで、よい女性キャラだった。
この作者のほかの作品、違う文体も読んでみたいな。
- 感想投稿日 : 2019年7月21日
- 読了日 : 2019年7月21日
- 本棚登録日 : 2019年7月13日
みんなの感想をみる