世界での日本の皇室の地位が知りたくて手に取ってみた。近年、妙なナショナリズムの高まりを感じている。それ自体は悪いとは思っていないが、行き過ぎによって自己優越感や他者排外主義へと結びつくのことを懸念している。そのナショナリズムの高まりの中でYouTubeやその他のネットメディアでよく見かけるものの一つが天皇陛下の特別な世界的権威を訴えているものである。
この本によれば、現代国際社会では国によって君主の優位性はなく、世界の君主が集まる場での席次などは在位期間で決まるらしい。そもそも君主制国家ではない共和制国家などでは、大統領よりも王や皇帝のほうが権威があるという論理は通らないそうだ。たしかに外交儀礼上君主も大統領も他国へ行けば同じ「国家元首」として扱われている。また、「世界で唯一のエンペラー」という称号も地域や国によって権威性は異なり、皇帝は王よりも格上である論理は通らないこともしっかりと説明されている。さらには本書では皇室は「万世一系」とは言えないことも根拠を示して説明されている。諸説あるとは思うが、筆者は非常に説得力のある主張をしていると思う。
また、チベットと中国の関係についてはとても勉強になった。チベットは大清帝国以前まで、トップ同士がお互いの地位を認めあう関係だったようだ。
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- 感想投稿日 : 2016年5月4日
- 本棚登録日 : 2016年5月4日
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