名前に「幸」の一字を持つ作家先生5名による「幸せ」がテーマのアンソロジー小説集。
解説に曰く「幸せをテーマにするということは不幸せをテーマとすることと表裏一体」(p277)とあるが、果たしてそうなのだろうか。「幸せ」がテーマならば直球に「幸せ」がテーマの作品を期待したいです。
5編収録。
〈Whether〉 最もテーマに素直だと思える作品。コンパクトながらバッチリ伏線が張られており、しかもきちんとミスリード・伏線へのヒントも示されている、雨上がりの虹のような気持ち良い一作。天気トークに絡めて涙のことを小雨と表現する〆はとってもオシャレ。
〈天使〉 打って変わって少し変則的な「幸せ」を描いたと思う作品。とにかく結末が想定外というか唖然。最後の一行に「幸せだった。」(p119)と明記されているので’幸せでしたとさ’、とはなるのだろうが’その後幸せに暮らしましたとさ’ではないので、福子はじめタカシ・カホは果たしてどんな人生を送ったのかが気になる。
個人的には浪川程度の小悪党ならば殺す必要性までは感じられなかったので、福子の負った業に釣り合っていないのでは?と感じスッキリせず。
〈ふりだしにすすむ〉 ちょうど最近『ペンギンのバタフライ』(PHP文芸文庫)を読んでおり、そちらにも収録されていた本作を再読。改めて感じたが主人公・りりこがやっぱり嫌い。また、特に「幸せ」がテーマという訳でもないように思う。ハッピーエンドっぽくはあるが。
〈ハッピーエンドの掟〉 面白かった!この話どうなるの?と読んでいたら最後の章でひっくり返される。これは確かに幸せの表裏だろう。タイトルも皮肉が効いていて痺れる。冷蔵庫の中には何が入ってたんだろう⁉︎気になります!
〈幸せな死神〉 小路幸也先生の文章に初めて触れました。本当に何となくですが、きっとすごく優しい方なのだろうなぁ、と感じたはなし。
まず本作に登場する人物全員まんべんなくに救いがあります(冒頭で倒れたおじさんはご愁傷様ですが…けど苦しまずに旅立ったのでは)。
紛れもなく良い話と思いましたが小説として心に残ったかと言われると…。もっと死神との別れが名残惜しく感じるくらい交流の描写があったら尚良かったような。けどそれだと悲しすぎますかね。
1刷
2022.1.7
2022.1.8 修正
- 感想投稿日 : 2022年1月7日
- 読了日 : 2022年1月6日
- 本棚登録日 : 2022年1月6日
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