ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者 (中公新書 2257)

著者 :
  • 中央公論新社 (2014年3月24日発売)
3.87
  • (58)
  • (114)
  • (65)
  • (10)
  • (2)
本棚登録 : 1160
感想 : 112
4

人間の行動や価値観は環境によって定義される、ということを強く感じたきっかけが、アイヒマン裁判、そしてハンナ・アーレントという人の存在だった。

何となく知ってはいたものの、彼女自身の人生や、思想そのものについてきちんと触れたことが無かったので、この本を読んでみた。

哲学的、抽象的な表現も多く、また哲学者や思想家の知識に乏しいので、理解しきれていない部分もあるけど、自分の頭で考えることの大切さと、考えずに思考停止してしまうことの恐ろしさを改めて学ばせてもらった。

「『物の周りに集まった人々が、自分達は同一のものをまったく多様に見ているということを知っている場合にのみ』世界のリアリティは現れる」という一文がとても印象に残っている。今でいうダイバーシティの文脈の話だけど、ここが崩れるといわゆる独裁政治や全体主義の方向に進んでしまうのかもしれない。


本筋ではないけど、労働と仕事と活動の話も面白かった。
日々の生活の営みの中で行われる労働(後には何も残らない)と、作品や製品など成果物を生み出す仕事、そして人と人の間で行われる共同としての活動。どれが良い悪いではなく、このバランスをうまく保ちながら生きていけたらいいなぁと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年5月3日
読了日 : 2018年5月3日
本棚登録日 : 2018年3月26日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする