官僚の反逆 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎 (2012年11月30日発売)
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【どんな本?】 「官僚制化」する社会を様々な側面から描写した本。
特に、「官僚が悪い」といって改革を進める人たちこそが、その改革で「官僚制」を強めてしまうという逆説が面白い。「改革派官僚に騙されるな!」という帯タイトルがある。
【著者紹介】 (出典:wiki)
中野 剛志(なかの たけし1971年 - )日本の経産官僚、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構総務企画部主幹、評論家、元京都大学大学院准教授。研究分野は経済ナショナリズム、保守思想。著書「国力論」「TPP亡国論」「日本思想史新論」など

【オススメな点】
・著者は国内外の政治経済の見識が広い(近代の政治経済から現代の政治状況+他国事例)
政治経済の基本的考えやその名著(論文)を紹介しながら解説してくれるので、知識が増えるという意味で勉強をした気になれる。(自分で原著を読み込んだわけではないので、盲信は危険かもしれない。)
例:オルテガの「大衆の反逆」(「大衆」と「エリート」の違い)。マックス・ウェーバーの官僚論。高橋伸夫の「虚妄の成果主義」(年功序列制、成果主義等の真実)、ペルーや韓国の構造改革の結果

【目次】
序章:反逆の宣言
第一章:虚妄の行政改革
第二章:官僚制化する世界
第三章:グローバルな統治能力の危機
第四章:反逆の真相
終章:政治主導を目指して

【要約】
・「TPP使って、外圧で日本を変える」と宣言した日本政府OB、アメリカの外圧を利用することがまったく悪いことだと発言する外務官僚。
→これは「国民主権」の否定を宣言している。国民主権、すなわち国民が自国の将来は自分たちの意思で決めていきたいという民主主義の理想の放棄。
 ⇒このような「官僚の反逆」の背景には何があるのか ←テーマ

・日本1990年より、構造改革が目指してきた。しかし政治主導を目指したはずの改革運動の結果、逆説的なことに「官僚制化」が広がってしまった。その範囲は、官界はもちろん、政界、財界、学会の隅々にまで及んでしまった。
例:政界・官界…小泉政権、民主党政権  財界…世界のグローバル化(マクドナルド化) 学会…主流派経済学  
・官僚制…非人間的、計算可能な規則。官僚制組織は、大衆民主制の随伴現象である。
官僚制の本質は、「だれかれの区別をせずに」「計算可能な規則」に従って事務処理をしていること。
・グローバル市場に広がる官僚制化現象(マクドナルド化)。市場における利潤追求行動は、実は官僚制化と親和性が高い。→グローバル化とは官僚制化である。
・新自由主義(「自由放任(完全なる自由市場)」「構造改革」「規制緩和」「小さな政府」)を達成するには、その手段として、官僚制が必要である。なぜなら、市場に介入しようとする政治に対抗できる強力な専門家集団が必要であるから。その専門家集団こそ官僚にほかならない。

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カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2015年1月6日
本棚登録日 : 2015年1月6日

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