読み始めると読み耽ってしまう幼少期の細かく綺麗な心理描写。
いま咲くばかり薫をふくんでふくらんでる牡丹の蕾がこそぐるほどの蝶の羽風にさえほころびるように、ふたりの友情はやがてうちとけてむつびあうようになった。
私はまた唱歌が大好きだった。これも兄のいる時には歌うことを許されなかったのでその留守のまをぬすんでは、ことに晴れた夜など澄みわたる月の面をじっと見つめながら静な静な歌をうたうといつか涙が瞼にたまって月からちかちかと後光がさしはじめる。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説 和書
- 感想投稿日 : 2021年9月12日
- 読了日 : 2012年11月2日
- 本棚登録日 : 2012年11月2日
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