1949年10月5日から始まる、ロンドンの古書店マークスの店員とニューヨークの脚本家ヘレーン・ハンフとの20年間の交流を描いた書簡集。ネットの普及により奔流のような伝達の迅速性や簡易性を得た代償に、緩やかな流れからの景色のような大切なものが失われたことに気付かされる。大戦後の米国の好景気と英国の疲弊の様子も綴られ、食糧を贈るへレーンと喜ぶ店員からの感謝の手紙にはほっこりさせられる。カジュアルなへレーンと律義でフォーマルなドエルや店員とのウィットやユーモアに富む手紙のやりとりは、江藤淳の巧みさもあって大西洋を隔てた両者の笑顔や困惑顔が目に浮かんで来る。心和らぐ一冊でした。
I love inscriptions on flyleaves and notes in margins, I like the comradely sense of turning pages someone else turned, and reading passages some one long gone has called my attention to. 私は見返しに献辞が書かれていたり、余白に書き込みがあるの大好き。だれかほかの人がはぐったページをめくったり、ずっと昔に亡くなった方に注意を促されてそのくだりを読んだりしていると、愛書家同士の心の交流が感じられて、とても楽しいのです。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
アメリカ文学
- 感想投稿日 : 2023年10月31日
- 読了日 : 2023年10月29日
- 本棚登録日 : 2023年10月29日
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