他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ

  • 文藝春秋 (2021年6月25日発売)
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サブタイトルの「アナーキック・エンパシー」とは、国家権力やヒエラルキーに対する懐疑の目を持ち、社会の様々な「亡霊(人間の自由を奪うあらゆる制度や思想)」から人間を解放し、国家や企業のための利ではなく、人間を利するために行動することだと説く。新しい資本主義や公益資本主義が主唱される中、個々の人間が国や企業の利益より自身の利益を優先する行動を取ることを許容する寛容な社会は出現するのだろうか。
エンパシーという「意見の異なる他者の感情や経験などを理解する知的能力」を習得する為には、「他者の感情はあくまでも他者に属するものであることを弁え、他者の経験を想像する時に自分の解釈を押し付けないことが必要であり、それに加えて、他者の生活を彼らが属する集団の歴史的背景などを含めたコンテクストの中で理解せねばならず、これら全てを数分で、または数秒で行わねばならないからこそ、エンパシーとは非常に高度なタスクなのだ」と米国の学者は言う。
安易に他者の靴を履こうとする自分を戒める言葉だ。
アナキストの金子文子、エンパシーのダークサイドに関するサイコパスによる他者の痛みを楽しむ記述や、エンパシーの能力が欠如したサッチャー元首相等の記述も興味深い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教養
感想投稿日 : 2022年2月14日
読了日 : 2022年2月14日
本棚登録日 : 2022年2月11日

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