上巻で散りばめられたピースが鮮やかに収束していくのを楽しむために残されていた、上質のメインディッシュという味わいの下巻。
カササギ殺人事件とは異なり、劇中作と作中リアルタイムの事件の両方が一気に解決されるため、情報量が非常に多く、読んでいる(正確にはAudibleで聞いている)とどちらの話をしているかがごっちゃになってしまいそうになる。もちろん、そういった相似系を生み出すことと、そこから外れていくことの面白さこそが、著者の狙いに違いない。
本作もカササギ事件と同じく、劇中劇は正統派のミステリーという形で話が終わる一方で、作中リアルタイムの事件は人間性の汚さをあぶり出すような、やや底意地の悪い終わり方を見せる。作中で描かれるアラン・コンウェイはどうしようもない品性の人間だが、劇中でも言及されるように、彼は自分の作品が”売れる”ことを第一の目的として、読者に嫌われないようにすることを心がけていたみたいだ。
コンウェイの作品の数だけ謎がある可能性が示唆されているように、スーザン・ライランドシリーズはまだまだ続く可能性があるようだ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリ
- 感想投稿日 : 2023年8月5日
- 読了日 : 2023年8月1日
- 本棚登録日 : 2023年8月5日
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