映画『佐々木、イン、マイマイン』の劇中劇「ロング・グッドバイ」をフルで読みたくて手に取った。訳のバージョンが違ったようで、私が一番好きだった「お前は今、過ぎてゆくものたちをぞっとする思いで見つめてるんだ」という台詞がこの本では「運ばれてゆくガラクタのなかに昔の思い出を見つけて楽しんでるんだろう」ていう表現だけでなく意味まで微妙に違う訳になっていてややしょんぼりしたものの、収められている短い戯曲7篇には、どれも明るい話ではないのに不思議と心慰められた。私は犬猫にあまり興味がなく、SNSで猫の可愛い画像が流れて来ても「無」の境地でスクロールする人間だが、猫と青年の恋を描いた「風変りなロマンス」は、そんな私の心さえほんのり温かくしてくれた。心温まるいい話ってことじゃない。そこに描かれる哀しみやよるべなさがわかるから、心の温度がかすかに上がるのだ。
あと、古い訳の古めかしい言い回しが逆に新鮮で生き生きと感じられ、戯曲って面白いのかもと今更気づけた。
作家テネシー・ウィリアムズにも俄然興味が湧いたので、続けて代表作をいくつか読んでみようと思う。いきおいでシアタークリエで上演中の『ガラスの動物園』のチケットまで取ってしまいました。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年12月18日
- 読了日 : 2021年12月17日
- 本棚登録日 : 2021年12月17日
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