本書は著者のデビュー作である。
第3回野生時代フロンティア文学賞を受賞し、本作でデビューした。
最近のお気に入りの作家の第一歩はなんだか初々しい。
選者たちの評でも記されている通り、ベタ(綺麗な熱帯魚で闘魚とも言われる)の描写が活かしきれていない。
何を象徴しているのか伝わりきっていない。
いじめの加害者たち?父親の心?
うーん、それにしてはどれもしっくりこない。
アスペルガー症候群と思われる女性研究者、早苗も良い人物像ではあるのだが、女子高生二人、父親との対照である、ということはわかってももう少し作り込めていた方がよかったなと感じた。
私が感じたのと同じような感想を選者も抱いていたということはそこは読み手が引っかかるポイントだと思う。
(なお私が読んだのは単行本の方)
しかしこのやや拙い感じが、著者のスタートかと思うと、なんだか嬉しい。
どんな書き手も最初は下手な部分がある。
そう思うと、勇気が出てくる。
・・・著者にとっては不本意だろうが。
さて、このやけつく痛みはどうしたものか。
いじめなんてそこらじゅうにある。
無視、ものがなくなること、悪口、笑い。
でもその一つ一つを犯罪と言えないのなら。ならば私が。
そう考える父親の苦しみは息苦しい。
葛藤をテーマにした物語。
そこにある合理的ではない行動は、誰もがわかるが、誰にもわからない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリー
- 感想投稿日 : 2021年7月2日
- 読了日 : 2021年7月1日
- 本棚登録日 : 2021年7月2日
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