僕の神さま

著者 :
  • KADOKAWA (2020年8月19日発売)
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感想 : 130
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最近この著者の作品をよく読むようになった。
真綿で首を絞めていくようなミステリ、というのか……。
優しさの奥に隠れている昏さ、明と対になる暗。
そんな雰囲気が好きだ。

さて、本作の主人公たちは小学生。
彼らはどんなに頭が良くても、どんなに頑張っても、「子供」だ。
それがある種の絶望感を持って迫ってくる。
もちろんお話とわかっている。
でも、本作のような内容を読むと、ああ、私は、
子供たちを助ける仕事、強制力を持って彼らの生命身体を脅かすような者と戦える人になりたかった のだと思う。
それを一番感じるのが、「夏の「自由」研究」。
ずっと心に引っかかり続ける後悔、そして無力感。
ズキズキと痛む傷は、彼らの心から消えることはあるのだろうか。

逃げてもいい、子供なんだから、そう水上君は言う。
そう、子供なんだから、助けを求めていい。
人生のほとんどが大人の時間なのだから、たった20年ぽっち、ましてや小学生なら、助けを求めていい。
もちろん、現実世界は、そんなに甘くなくて、助けを求める術を知らない、奪われた、助けてもらえなかった、そんなこともある。
大人が受け止めきれないこともある。でも。
水上くん、君もだよ。
君だって子供なんだ。
どんなに大人ぶっても、どんなに賢くても、君だって助けを求めていい。
誰かの人生を背負うには、まだまだ経験値不足だよ。

歳をとることは夢を捨てることだ。
キラキラは消えていく。
老いは怖い。
でも、自分では輝けなくても、なりたい自分になれなかったとしても、だから、次代がいるんじゃないか。
キラキラを残してあげられるんじゃないか。

子供は、宝物だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2020年10月4日
読了日 : 2020年9月21日
本棚登録日 : 2020年10月4日

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