幼い頃に誘拐され、記憶の一部を失った少女、千景。
その彼女の記憶が、少しずつ戻ってくる。
彼女を誘拐した人の姿、父親の姿がだんだん明らかになってくる。
それは果たしていいことなのか。
記憶が戻るにつれ、千景は恐怖と向き合わざるを得なくなる。
自分自身が誰かを傷つけてしまったのではないか、図像術が誰かを不幸にしてしまったのではないか。
その恐怖と、知らないでいる喪失感と、彼女はどちらを選ぶのか。
本作では「堕天使」そしてアトリビュート(持ち物)がメインの題材として出てくる。
ウルカヌス、キュベレー、ユノ、ネプトゥーヌスと言った馴染みのない言葉も出てくるが、実は結構日本でも有名な神々を指す。
あえてそのよく知られた言葉を使わないことで、神秘性を高めているのかもしれない。
毎回物語は西洋絵画を題材に取っており、美術ファンにも良いのだが、絵画そのものを知っていた方が楽しめるなと思う。
もちろん想像することの大切さ、自由さはわかっているのだけれど、絵を言葉で説明するのはとても難しくて・・・。
素敵な挿絵の中に、アウトラインだけでも絵画を入れられたら良いなと思う。
管理団体の権利関係などにひっかかるのだろうか・・・
本作が終わりではない、かもしれないが終わりのような気もする。
「完結」となっていないから、まだ解かれていない謎が解けるのを待ちながら、二人の年齢の割には幼い恋の行末も見守りたい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリー
- 感想投稿日 : 2020年7月23日
- 読了日 : 2020年7月22日
- 本棚登録日 : 2020年7月23日
みんなの感想をみる